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2022年7月の2件の投稿

2022年7月23日 (土)

経営課題をAIで分析するとの記事ですが…

横浜銀行が、人工知能(AI)を活用して経営課題を推計するモデルを開発するとの記事です。

横浜銀行、AIで企業の経営課題を分析 ミライズと開発: 日本経済新聞 (nikkei.com)

企業の財務情報における業績や預金口座の取引履歴など銀行が保有する情報と経済指標などの外部情報を組み合わせることで、企業の経営課題を推定できるモデルを体系化するようです。
これまで、金融機関が推進していた「事業性評価」に基づく課題解決型の営業活動に関しては、一定規模以上の取引先が主体であり、規模が基準に達していない中小小規模企業に関しては具体的な対応ができていなかった点を考えると、収集した情報を多面的に活用できるように人工知能(AI)機能を活用するのは一つの対策といえるでしょう。

これまで人的管理を主体とする対象企業群には入らない取引企業の中から、企業として想定されるニーズをパターン化した上で絞り込むということかと思います。しかし、収集されている財務データも含めた企業情報と決済口座の動向から、どこまでの課題を明らかにすることができるのでしょうかね。
決済口座情報を活用した運転資金需要へ対応する取り組みは既に実施されており、目新しいものにはならないと思いますし、全ての預金取引を一金融機関に集中している企業も少なく、どこまでの情報として捉えるのか、基準を設けたとしても有効な情報と判断できるのか限界がありそうです。
一方で、財務分析を主体とした経営課題を発見する手法に関しても、既に各金融機関が導入している財務分析ツールにより分析レポートとして提供されているケースが多い点を考えると、新たな発見としてパターン化できる要因はあるでしょうかね。

マクロ的な指標も考慮するということですが、昨今の為替相場(円安)や輸入がベースとなる原材料価格の高騰等が、企業業績にどの位影響があるのか等に関しても、業界情報を参照すれば業種等からある程度類推することも可能ではないか思います。
最近、人工知能(AI)の機能を活用するという件の事例は多いのですが、よくあるケースでは、実際にAIツールを用いて導き出した内容を検証すると、これまでの経験値で考えられていな内容と同じであり、目新しいものではないという事も多々あります。

企業の倒産リスクを判定する信用リスクモデルを体系化する場合、色々な手法が提供されており、統計モデルである「判別分析,ロジットモデル,ハザードモデル」や、オプション理論を用いたオプションアプローチモデルである「構造モデル、外生変数モデル」の2つに分類できますが、様々な観点から評価検証されています。

人工知能(AI)機能は、ある意味、これら複数のモデルを組み合わせたハイブリッド型も考えられますが、「何を導き出すのか(目的変数=例えば倒産する可能性)」が重要であり、且つ、どのような情報をどのような手法を用いて体系化するのか明らかにしておくことが肝要ではないでしょうか。

2022年7月15日 (金)

本格的な中小企業支援が必要になるでしょう…

コロナ関連倒産が増加傾向にある中、想定以上に進む「円安」により今年後半は、円安関連も含め更に経営難による倒産が増加すのではないでしょうか。
また、コロナ関連による支援策でもある「無担保無利子融資=ゼロゼロ融資」の元本返済が本格化してきていますが、当該融資利用企業の倒産も顕在化しているようですし、第7波ともいわれるコロナ感染の拡大と円安による物価高騰により、今年後半の経済環境改善は見込みも薄く、今後も厳しい状況が続くことが予想されます。

金融機関としても取引企業支援の対策を考える必要もありますが、企業経営再生支援という観点からファンドによる対応を検討するケースも多くなりそうです。
コロナ再生ファンド、120億円で設立 中小機構など出資: 日本経済新聞 (nikkei.com)
今回のスキームでは、ファンドが債権を買い取り、様々な再生スキームにより支援することになりますが、基本的には地域金融機関単体では対策を講ずることは難しいが、再生が見込まれる企業を選定し支援することが前提になるのではないかと思います。

しかし、リーマンショック後の「金融円滑化法」による支援後の処理でも問題となっていますが、再生が難しい企業群=最終的に事業をクローズせざるを得ない事業体をどのように処理するのか、クローズ企業を対象とした処理を本格的に考える必要があるのではないでしょうか。
今後、更に問題となるであろう「ゼロゼロ融資」利用先に関しては、金融機関としても保証協会への代位弁済手続きにより実質的損失は免れ、且つ、最終処理も自らの手から離れることで事務処理負担も無くなることから、本格的な支援を考える金融機関は少ないのではないか、ということも懸念されます。

本来であれば、企業価値が毀損する前に、保有する経営資源(職員などの人員も含め)を最大限利活用した処理方法を考えることが必要となるはずですが、これまでも、当該処理に関しては先延ばしすることを前提とした対応を続けてきており、抜本的な対策が講じられていないのが実情です。
最終処理を実施する場合、債権は簿価額ではなく「再評価による時価額」で処理することとなりますが、簿価と再評価時価額の差は債権保有機関が損失処理をする必要があり、税負担等を軽減する措置を講ずるなど抜本的な制度的対策を利用できる環境を整備することも必要になるかと思います。
この点は、民間ではなく政府機関が主体的に活動することが必要になるかと思いますが、政府による経済対策の一つとして「お金を提供するだけではなない制度的な支援」として是非とも盛り込んでもらうことを期待したいですね。
また、金融機関においても、事業再生支援処理の課題でもある「クローズ型処理」を進める上で、経営価値が毀損する前の早目の対策について金融機関と会社経営者が共通認識で検討できる環境を早急に整備し、運用してもらいたものです。

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