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2024年10月 2日 (水)

住宅ローン変動金利に関する記事ですが…

日銀ゼロ金利政策解除後の正常に戻りつつある金利環境のもと、変動金利型住宅ローンの基準金利となる「短期プライレート」も見直されました。その結果、住宅ローンの基準金利も引き上げられますが、各行、顧客囲い込みの観点から様々なサービスを利用している顧客向けに優遇金利の適用を実施することで引上げイメージが浸透しないよう、工夫しているということでしょうか。

住宅ローン変動金利、三菱UFJや三井住友など大手銀行上げ 「優遇」は競争激しく - 日本経済新聞 (nikkei.com)

借入時点の金利も重要ですが、変動金利型住宅ローンの場合、商品特性として「金利の見直し基準」と「返済額の見直し方法」を覚えておくことも重要となるでしょう。

【金利見直し基準】
金融機関の扱いにもよりますが、毎月1日に見直すケースと、年2回(4月1日と10月1日)見直すケースの2種類があります。
*毎月1日を基準日とし、利率は基準日における基準利率と前月1日の基準利率とを比較し、差が生じた場合にその差と同一幅で変更し、翌月返済日の翌日から適用します。
*年2回の場合は、4月1日を基準日として決まる適用金利は、同年6月の約定返済日の翌日から、10月1日を基 準日として決まる適用金利は、同年12月の約定返済日の翌日から適用されます。

【元利均等返済の返済額の見直し】
*5年ルール:借入後5回目の10月1日を基準日とする適用金利の見直しを行うまで返済額を一定のままとし、期間中、金利に変更があった場合も返済額は一定のままで、その内訳である元金と利息の金額を各々変更します。以降5年ごとに返済額の見直しが行われます。
*125%ルール:借入後5回目の10月1日を基準とした見直しにて毎回の返済額を再計算しますが、借入金利が上昇し返済額が増額となった場合でも、それまでの返済額の125%を上限とします。
但し、ここでポイントになるのは「金利情勢等により、当初の借入期間が満了しても未返済残高が生じる場合があり、この場合、原則として期日に一括返済する」という点です。
この20数年は、金利上昇局面が無く低金利が続いていたため「未返済残高が残る」という事例は発生していませんでしたが、今後、発生する可能性はありそうです。
単純計算ですが、5年前に「3000万円の住宅ローンを期間30年、金利:0.7%」で借入した場合、毎月の返済額は元利金で「92,414円」になりますが、この場合、125%ルールを適用すると「115,517円」が上限になります。
見直し時期の借入残高が「2600万円」となり、適用金利が「3.4%」になると元利金返済額は「115,305円」で、ギリギリ見直しできますが、「3.5%」となると未返済残高が残ることになりそうです。
ゼロ金利時代ではあり得ませんでしたが、今後の金利上昇局面を考えると、未返済残高が残るケースは多くなるのではないでしょうか。

となると、一般利用者の立場を考えると、金利見直し時期を見て他の金融機関から借り換えることを検討することが多くなりそうです。
金融機関にとっては、今年後半から来年にかけては、借り換えケースが多くなることも予想されるため、優遇金利を適用して差別化を図っているのでしょうかね…

2024年9月13日 (金)

紙の約束手形廃止の代替に関する記事ですが…

メガバンクは、2025~2026年にかけて「紙の手形・小切手の発行を廃止する」と公表していますが、その代替として電子決済の仕組みを確立しようとするのが目的のようです。

三菱UFJや三菱商事、手形代替へ電子決済 法人クレジットカートで - 日本経済新聞 (nikkei.com)

「紙の手形・小切手の発行廃止」に関しては、2021年に政府が発表した成長戦略の中で「5年後の約束手形の利用の廃止に向けた取組を推進し、小切手の全面的な電子化を図る」と発表され、全国銀行協会も「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」で、2026年度末までに電子交換所における交換枚数(手形・小切手)をゼロにすることを発表したことから、メガバンクが先陣を切って廃止を表明したものです。

一方、紙による手形・小切手の廃止に向けて利用が推奨されているのが、株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称・でんさいネット)が取り扱う電子記録債権(でんさい)です紙の手形の課題を克服した金銭債権として2013年2月からサービス提供開始されていますが、爆発的に普及している訳ではありません。
電子記録債権(でんさい)が普及しない最大の要因は「利用者側の手数料負担」と「利用環境=インターネットバンキングがベース」であると言われており、当該点を根本から見直す必要がありそうです。

ビジネスの世界ではさまざまなツールがデジタル化している中で、紙の手形には「郵送料・印紙税などのコストや紛失・盗難のリスクがある」「約束手形の場合、資金回収までの期間を要するという受取側の負担が大きい」というデメリットも存在し、商取引を行う上では時代の流れ にそぐわないとも言われています。

紙媒体の手形・小切手を廃止し電子化を進めることで、上記のような紙媒体特有のデメリットを解消する狙いもありますが、「手形・小切手法」に準じた扱いが可能な「電子記録債権(でんさい)」とは異なる、クレジットカード機能を活用するビジネスモデルはどこ迄普及するかは未知数ではないでしょうか。

記事では、売り手の企業がカード決済可能な請求書を発行し、買い手が法人カードでの決済に応じると最短で翌営業日に入金される。売り手側は素早く入金が受けられ、代金の未回収となるリスクが抑えられる。買い手側は代金の引き落とし日まで支払いを遅らせられる利点がある・・・となっています。
この場合、カード決済機能を前提にすれば、加盟店の位置付けになる「売り手企業」が決済代行手数料3%程度を負担することになるかと思います。また、買い手企業は法人カードの年会費等の費用負担を強いられる可能性もあるでしょう。この費用負担が、「でんさい」の課題となっている費用負担を大幅に引き下げることが可能であるならば、新たな決済基盤として選択されることもありでしょう。
ただ、三菱グループと取引のある企業への利用促進を目指すようでうが、一般の商取引のデファクト決済機能として普及するには相当ハードルが高そうですね。

2024年7月24日 (水)

地銀の新たなATM展開に関する記事です…

地方銀行である北海道銀行が、地元のコンビニ運営企業であるセイコーマートと提携、銀行ATMを道内600カ所のコンビニ店舗に設置するそうです。

北海道銀行、セイコーマート600店「道民のATM」 金融空白に一手 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

北海道銀行の店舗数は144(本支店136・出張所8)ですが、大半が道内の主要都市部に集中しているのが現状で、ATM網も中核都市を主体に展開されており、空白地である地域における顧客接点として活用できる点は、戦略上のメリットとして大きいでしょう。
SDGsによる金融包摂への対応という観点からすると「
金融サービスから取り残された人々が経済的に安定した暮らしができるよう、基本的金融サービスへのアクセスをサポートする取り組み」の一環として、ATMという半疑似顧客接点(バーチャルでもありリアルでもある点)を充実させる意味合いは評価できるのではないでしょうか。

設置されるATMの機能にもよりますが、現預金の入出金の他、振込・振替、公共料金支払い、各種手続き、資産運用、その他決済等、個人の方を対象とした各種サービスを提供できる多機能のATMであれば、周知方法を工夫することで高齢化が進む過疎地でのサービスモデルとしては有効に機能することも考えられます。また、銀行側が負担するであろう設置に関する手数料に関しても、自前でATMを保守管理するよりは効率が良く、銀行側としてはメリットが多いのではないでしょうか。

ただ、このモデルを全国の地銀に展開するとなると、そう簡単にはいかないのが現状ではないでしょうか。異業種から銀行業に参入が相次いでいる現状(コンビニも然り)を考えれば、地域の金融機関と大手コンビニが手を組むことはおそらく無いでしょう。
道内全域を営業基盤と考え、道内を中心とした店舗展開を行い、且つ、他の本州資本によるコンビニとは一線を画した様々なサービス展開を行っているセイコーマートだからこそ、期待が持てるのではないかと思われます。
コンビニ評価でも全国一位となるほどですし、道内地方の方々にしてみれば、ある意味、重要な生活基盤にもなっているコンビニとしての店舗網に、金融分野のサービスが提供されるモデルとして周知されれば、社会インフラととしても重要になるものと思われます。

おそらくですが、ATMが障害によりダウンした場合も、セイコーマートの従業員による人的対応により対処するBCP(Business Continuity Planning)も視野に入れた内容になっているのではないでしょうか。
ネットワーク化された現在のサービスは、障害発生時の「オフライン対応」を如何にして業務活動に取り込むかも重要な検討課題になっていますが、人的サポートを視野に入れた対策を講ずることは重要な要素になるのではないでしょうか。

記事にもありますが、地方銀行と地元の信用金庫が連携する地域における垂直型の業務連携は、既に全国でも事例として行われていますが、コンビニという新たな形態との連携によるサービスモデルがどのように進展するか見守りたいものです。

2024年7月 5日 (金)

決済サービスの動向に関する記事ですが…

電子マネーの決済が5カ月連続で減少する一方で、QRコード決済が増加しているそうです。

Suicaなど電子マネー落日、決済額5カ月連続減 PayPayなどQRコード決済が逆転 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日本銀行の統計データ(PAYMENT AND SETTLEMENT STATISTICS (May 2024) (boj.or.jp) の定義によれば、電子マネーとは、プリペイド方式のうちIC型の電子マネーが対象になっているそうですが、2023年12月から5ヶ月連続して減少しています。
(<楽天Edy>、九州旅客鉄道株式会社<SUGOCA>、西日本旅客鉄道株式会社<ICOCA>、株式会社パスモ<PASMO>、東日本旅客鉄道株式会社<Suica>、北海道旅客鉄道株式会社<Kitaca>、イオン<WAON>、セブン<nanaco>の8機関)。
一方、デビットカードの利用は5年以上増加傾向にあり、2024年1~3月期も+21.3%(前年同期比)となっています。(本邦にてデビットカードを取り扱っている日本電子決済推進機構(JEPPO)、JCB、VISA、銀聯の4機関)

経済産業省が公表しているキャッシュレス決済比率の統計では、2023年度民間最終消費支出の39.4%が対象となり、クレジット:83.5%、デビット:2.9%、電子マネー:5.1%、コード決済:8.6%となっていますが、前年比で増加しているのはコード決済となっています。過去5年間の比率をみると、クレジットと電子マネーが減少、デビットとコード決済が増加という傾向になっています。(2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました (METI/経済産業省)

キャッシュレス決済に関しては、消費利用できる場所(=加盟店)と処理できる端末の普及、最終清算処理スキームが利用条件となりますが、QRコード決済は専用の端末が無くても、タブレットやスマフォにQRコードを表示し読み取ることで処理できることから、加盟店側が端末導入コスト等考慮しなくても良い点が、小売店など利用場所を拡大している可能性があります。また、今では、コンビニやセルフレジの普及によりコード決済を選択できる環境が整備されてる点もありますが、PayPayなど「決済とポイント」を連動する仕組みとなっている点も普及を後押ししている要因と思われます。
また、VISAやJCBがクレジット端末でのタッチ決済を推進していることから、デビット決済の比率が高くなっているものと思われますが、記事にも記載されているとおり、交通系の決済に関しては、クレジットに置き換わる可能性は高いのでしょう。

くしくも、今週、偽造防止を目的とした新紙幣が発行されましたが、紙幣を取り扱う民間事業会社は今年に入り、端末を入れ替えたり、紙幣を読み取るソフトを改良したり対応していますが(銀行のATMも新しくなった気がしますが…)、発生するこれらのコストを経済効果とし1兆6千億円と推測されるという記事もあります。しかし、決済サービスの利用が消費支出の4割弱まで迫っている現状を考えると、今後さらに拡大するとなった場合、「決済を必要とする」民間企業側のこれらシステム関連コスト負担をどう考えるべきか、真剣に検討する時期に差し掛かってきたのかも分かりません。
経営者としては、決済に関するサービスの質を低下させず、利用者に利便性を提供し続けるための方法を、時間とコストを加味しながら考えなければならない、ということでしょうか。

2024年7月 1日 (月)

MUFGの法人IBの障害問題ですが…

休み明けの朝から、MUFGの法人インターネットバンキングの利用ができない状態が続いていますが、今現在も、ログインできない状況です。

三菱UFJ、法人向けサービスの障害続く 手数料差額補償 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

17時時点の状況という事で、下記内容がホームページ上で公開されています。

2024年7月1日(月)、BizSTATION/MUFG Bizへログインできない事象が発生しております(7月1日17:00現在)

2024年7月1日(月)の朝方より、BizSTATION/MUFG Bizへログインできない事象が発生しております。
復旧に向けた作業を進めておりますが、現時点では解消の目途は立っておりません。
お急ぎのお取引につきましては、当行ATMやお取引のある他の金融機関等のご利用をお願いいたします。
(全銀・ANSER接続サービス、サーバ接続サービスについてもご利用ができません。)
なお、2024年6月28日(金)18時以降に、2024年7月1日(月)付け振込指定日の振込依頼(承認操作)を行われた場合は、振込処理が行われておりません。対象のお客さまには個別にご連絡いたします。
お客さまにはご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。

ここで、気になるのが、記載内容が、他人事のようにあっさりしている点ですが、28日(金)18時以降に本日付の振込指定をしていた処理が行われていないというコメントです。
弊社もMUFGの口座をメインとして利用していますが、幸い、28日前に月末処理を済ませたので問題ないですが、仮に、他行からの振込入金の処理なども滞っていたら、月末決済で問題になるでしょうね。
通帳記帳すると、月末口座振替の社会保険料等の支払いは、本日付で処理されていたので、インターネットバンキング系の障害だと推察されますが、月末休日明けの月曜日の朝に障害発生というのが、間が悪かったようにも思います。
MUFGですから、中小・小規模企業との取引は多くは無いように思いますが、障害発生から復旧までにかかる時間が長すぎるようにも思います。障害発生の際のシステム面での対応としては、金融庁でも「システムリスク管理態勢の整備」ということで指導していますが、システム障害が発生した場合には、どのくらいの時間で復旧させるか定義されているはずです。
明日の朝以降、障害は解消しているのか、また、銀行としてどのような説明をさせるのか、対応を見守るしかないでしょうが、それにしても、MUFGは、銀行証券による顧客情報の利用問題が発覚したばかりであり、組織体制面のほころびが顕著になっているようです。

2024年6月 8日 (土)

事業性融資推進法が成立しました

企業が持つ技術力や成長性など企業価値を担保に設定して融資する「企業価値担保権」を盛り込んだ事業性融資推進法が参院本会議で可決、成立したという記事です。担保の登記システムの整備や適切な利用を支援する機関の設立などを進め、事業者と金融機関が利用しやすい環境を整え、2年半以内に施行されるようです。

企業価値を担保に融資、成長融資促す新法が成立 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

本件は、昨年の1月に金融審議会(首相の諮問機関)が新制度案として示していたのですが、1年遅れで法案が成立したことになります。2023年1月25日のブログでも記載しましたが本田伸孝のつぶやき (hfmc-honda.com) これまでの融資慣行である「不動産担保や信用保証」による保全措置から、契約通り債務履行できるか=事業を継続・維持・発展させることは可能なのか、事業性の評価ノウハウが重要な要素になるものと思われます。

ここ数年、金融機関は「担保や保証に過度に依存しない、事業性評価に基づく融資」の励行を指導されてきましたが、なかなか、改善できていないという現況を考えれば、本制度が普及するか否かは、やはり、運用側である金融機関の体制面の整備次第ではないでしょうか。
審査の入口段階で、担保の対価となる事業価値の評価の算定根拠を「利用者である事業会社」に正しく説明できるようにすることも必要になるのでしょうし、プロジェクトファイナンス等で利用される「コベナンツ条項」の取り扱いなども重要に要素になりそうですが、具体化して浸透させるには相応の期間が必要でしょう。

一方、昨日、金融庁からは「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底」するように要請文を発しています。PDF版
コロナセーフティネット保証4号やコロナ借換保証は6月末の期限を以て原則終了、日本政策金融公庫等の新型コロナウイルス感染症特別貸付等の金利引き下げについても終了する等、各種資金繰り支援策についてはコロナ前の水準に戻して、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援にすることを目指すようです。
また、事業再生を支援する上で、税金や社会保険料の支払いがネックになるケースもあることから、「事業再生情報ネットワーク」なるものも創設し、関係者が情報共有することで、支援策の策定をスムーズに行う事を目的にしているようです。

経営改善・再生支援と言われてもう何年にもなるでしょうか。おそらく、2009年の金融円滑化法施行後から、時々の情勢を考慮しながら方法を見直しながら進められてきましたが、「事業活動からどれくらいのキャッシュを生み出すことができるのか=返済原資を正しく見極める」という根本部分の考え方は、今回の「事業性融資推進法」の基本的考え方に変わりないように思います。
事業実態を正しく評価することが大前提になるかとは思いますが、決算数値だけでない様々な経営資源の要素を「評価」する基準を標準化するこができるか否かが重要になるはずです。
しかし、この考え方を一部企業だけではなく、取引先企業全てに適用するとなると、金融機関側の体制面や運用面ではまだまだ実現できていないのが現状でしょう。

2024年4月26日 (金)

マネロン対応に関連する記事ですが…

金融機関窓口における送金業務において、本来あるべき確認義務を果たせていたのか否かという事で問題視されているようです。

不審送金「見逃し」疑惑、メガバンク1行は異常検知で送金拒否…きらぼし銀行は80回・4億円超の送金も「適切に対応」(読売新聞オンライン) 

最近、SNS上で著名人になりすました“ニセ広告”で詐欺被害に遭った被害者が急増していると、話題にもなっていますが、今回も同様に投資詐欺に合ったケースです。ただ、問題となっているのは、金融機関窓口において、多額の送金を継続的に行っていた点のようです。

金融機関では、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与防止(AML/CFT)対応に関して取り組むべき内容が、監督官庁からガイドラインで指導されています。
国家としての体制整備状況を審査する政府間会合であるFATFにより各国の取組状況に関する審査が行われていますが、我が国は、2021年8月30日に公表された4次審査結果で「重点フォローアップ対象国」という位置付けになりましたので、最終評価期限(5年後)までにFATFへ改善報告を行う必要があり、監督官庁である金融庁でも、指摘された事項について、より一層管理を強化するように各金融機関を指導しています。
今月2日には金融庁から「マネロン・テロ資金供与対策ガイドライン に関する よくあるご質問(FAQ)も公表されています。(「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂版公表について:金融庁 (fsa.go.jp))


今回の問題に関しては、「取引受入れ時の対応」として、イレギュラーなものであったのか否か、組織的に運用面からも検証する必要がありそうです。記事を読む限り、国内における送金なのか、または、海外送金なのか明確には記載されいませんが、国内送金であっても、受取人が個人、特に外国人の方であった場合、金額が大きくなれば送金の目的や受取人の素性など確認すべき要素は多くなるはずですが、この点について問題がなかったのでしょうか。
インターネットバンキングによる送金取扱いではなく、窓口における送金受付ということであれば、なおさら、記事のように多額かつ多頻度の送金取組になることは無く、未然に防げた可能性が高いと思われます。
インターネットバンキングでも、送金処理ができる金額を一定限度額に設定されるケースや、本人に二段階認証を行う等対策を講じているケースもありますので、ここまでの状況にならなかったのではないでしょうか。

ただ、全ての案件に対して人海戦術で対応することは難しい状況にもなっていますので、ある意味、情報の高度利活用という観点からIT化を強化することも必要になるのではないかと思います。第一の防衛線(営業店における受付)、第二の防衛線(継続的な顧客管理の取組み)における活用パターンを実践できる環境を整備することが重要になるのではないでしょうか。HFMコンサルティング (hfmc-honda.com)

2024年3月11日 (月)

再生支援の総合的対策に関する記事です…

4月、民間金融機関による実質無利子・無担保融資の返済開始の最後のピークを迎えることから、官民金融機関等による再生支援等を一層促すための、経済産業省・金融庁・財務省は「再生支援の総合的対策」を発表しました。

不良債権の分類ルール、コロナ緊急措置を終了へ 金融庁 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

再生支援の総合的対策01.pdf (fsa.go.jp)

政府系関係機関の支援の他、民間金融機関に対しては、2024事務年度の監督指針の改正も含め、4月以降以下の対応を求めるそうです。
①事業者の現状のみならず状況の変化の兆候を把握し、一歩先を見据えた対応を求める
 ・日常的・継続的な関係強化を通じた事業者の予兆管理と認識共有(プッシュ型での情報提供)
 ・メイン・非メインに関わらず金融機関自身の経営資源の状況を踏まえた対応促進
②事業者の経営改善や事業再生を先送りしないため「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」等の策定を促進
③昨年実施した重点的なヒアリングの結果を踏まえ、各地域における事業者支援態勢の構築・発展に向けた取組みを一層促進

事業者の経営改善・事業再生を先送りしないため、早期に経営再建計画等の策定支援を行うことを目的としているようですが、過去の金融監督行政の推移をみる限り、抜本的な改革は行われていなかったのが実情でしょう。
2008年のリーマンショック後の金融円滑化法による支援から、型を変えては支援を続けてきた結果、過去からの支援で生き延びてきた企業への抜本的な改善は行われていないように思われます(暫定リスケによる返済延期も含め…)。
Kinyu

また、日銀によるゼロ金利政策は4月以降見直される可能性が高まっていますが、金利水準が正常に戻れば、これまで「業績が著しく悪化していて、本来であれば事業継続が難しいにもかかわらず、金融機関等の金融支援により延命している」企業は金利上昇を乗り切るのは極めて難しくなる可能性もあります。
・低金利でも利払いに苦労している企業は高金利の下では利払いにますます苦労することが明らかであり、新たな資金調達がいっそう難しくなる
・高金利の時代では、より安全な資金運用方法により十分に収益を上げられるから、投資家や金融機関は不良企業へ融資を行おうという意欲が弱まる

本来整理すべきであったが延命されてきた企業を抜本的に改革すべく、何年も前から「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」を策定し支援するよう、官民で色々な対策を講じてきたはずですが、実現されていない現状を考えれば、今後も変わりないのではないでしょうか。
監督官庁は、これまでどおり金融機関に取組み実績の報告を求めるでしょうが、形ばかりの報告だけで、実のあるものにならない可能性が高いと思うのは私だけでしょうか…

2024年2月15日 (木)

地銀の決算に関する記事ですが…

上場地方銀行の第三四半期までの決算に関して、与信関係費用が増加し減収になっているという記事です。メガバンクは増収の決算となっていますが、地銀は厳しい状況にあるようです。

地方銀行、不良債権処理などの与信関係費用3割増 大手銀行と明暗 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

与信費用に関しては、前年同期と比べ3割増加しているようですが、倒産件数の推移や問題となっている「ゼロゼロ融資」の返済開始による資金繰り悪化を加味すると、第4四半期も回復する気配はなく通年でも前年を上回ることが予想されます。
一方で、株価に関しては過去30年来の高値を更新する等順調のようで有価証券の含み益としてプラスに働くのでしょうが、反面、日銀の金融政策見直しによる金利正常化への転換は、国債価格への影響も考えられマイナス要因となる可能性もあります。更に、円安が相当進んでいる点を考えると外貨建ての運用資産についての影響も考慮する必要が出てきます。
金融機関毎の運用ポートフォリオによっり一概には言えませんが、地域金融機関の経営にとって与信費用の増加はプラスに働かないのは明白でしょう。

大手企業の決算内容を見る限り、景気は回復傾向にあり、賃金引き上げも政府が指導するように実現されつつありますが、国内景気は本当に順調なのかといえば、マイナス要因も多く、急回復することは望めないのではないでしょうか。
地域金融機関が支援する、中小企業の経営に関しては、地域によっては前向きな投資による資金需要も出てきてはいるようですが、中小企業景況調査(2023年10-12月期)の結果(令和5年12月12日)である業況判断IDは2期連続でマイナスを記録する等、回復基調とはほど遠いように思われます。

4月以降本格化する「ゼロゼロ融資」の返済への対応に関して、保証協会の協力もあり条件変更等により処理してきたのが実情ですが、抜本的な改革には手を付けることなく、先延ばしに過ぎなかった点を考えると問題が顕在化する可能性があります。
また、円安状態が今後も続けば、原材料等の輸入価格への影響も考えられ、国内市場をベースとする中小企業にとっては更に経営悪化に陥る可能性もあります。一部業種によっては訪日外国人の増加等によりプラスに働く可能性はあるものの、少子高齢化による人材不足という根本的なファクター改善が見込めない現状を考えれば、地域金融機関がメインとして支える中小企業の経営は総じて厳しさを増し、銀行が融資している貸出債権の評価も劣化する可能性が極めて高くなります。
次年度も引き続き経営が「V字回復」する可能性は極めて低くなるのではないでしょうか。

2023年12月12日 (火)

金融機関におけるデジタル化に関する課題記事です…

デジタル化を前提とした金融システムの課題は、やはり、障害発生への対応がポイントになるということでしょうか。

「最強デジタル銀行」DBS変調 障害頻発、業績も踊り場 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日本では、サービスを提供するインフラを如何にして持続的に稼働させれらるか=24時間365日稼働できる環境を構築することが求まられているのですが、銀行やカード会社、更には、通信に関わるキャリア会社のシステム障害も頻繁に発生しており、「言うは易し行うは難し」というところでしょうか。
記事にもありますが、新たなサービスを新技術で次々に開発することで、既存システムや開発されたシステム間において情報を連携させる仕組みが複雑になり、複合的な要因が絡み合い再開までに多大な時間を要してしまったようですが、国内におけるシステム障害についても同様のことが言えるのでしょう。

監督官庁としてはシステム障害発生時の対応として、監督指針などで復旧までの時間を定める等運用規定を設けると同時に、「金融機関のシステム障害に関する分析レポート01.pdf (fsa.go.jp)」を公表する等、システムリスク管理上の参考とすべく指導はしていますが、ブロックチェーンなど新たな技術が新規サービス開発に使用される状況下、対処方法も更に複雑になるのではないかと思われます。
また、システム構築や運用管理を開発ベンダーに丸投げするケーズも多々あることから、組織内の人的リソースが根本的に不足し、ガバナンス体制も整備されていないことも問題の一要因となっているのでしょう。

システムの安全性確保について検討すべき要素を考えると以下のとおりと思われますが、やはり、システム開発というよりも、オフラインでの運用方法も含めた運用パターンの構築が重要と思われます。
・緊急連絡網を含む非常時の対策体制の明確化
・基幹回線、営業回線等オンライン回線の考え方の明確化~耐震構造等の防災対応された建物設備等の施設や各機器の検討
・データの機密保護(漏洩・不正使用防止、個人情報の匿名性の維持・確保)
・ノーダウンシステムの維持・確立体制の整備(オフライン時の運用手法含む)
・データの安全性の確保と機密保護の確立を図る~暗号化、厳正な運用基準の制定等
・システム監査を含む運用のルール作り
・エンドユーザー側で発行、流通、還流の状況等が即時に把握できるような明確なルール作り

技術的には、サービス提供のデバイス端末として普及しているスマートフォンをベースにした各種サービス(決済・送金)を考えた場合、端末IDにより所有者が識別できているという前提で、障害時にはオフラインで端末内どおしで情報処理できるような(=仮払いによる資金決済で普及後清算される)仕組みも「緊急時アプリ」として提供できるのではないかと思います。

また、金融機関の経営面を考えると、収益性が低下する中、既存システムの運用保守も含めたシステム関連費用は経営全体コストの半数を占めると言われており、ITインフラの構築と運用が前提となる金融サービス提供を持続的に提供するには、今後更なる負担増加も見込まれます。
時代の流れの中で、想定されるサービスは全て提供できるようにするというフルバンキングの考え方ら、自らの業界でのポジションを考え、サービスは取捨選択するという考え方に転換する=特定の業務に特化し他サービスは他業態と連携するとい経営を行うことも必要になりそうですが、情報連携による基盤整備が鍵であり、どのように運用できるのか考える必要がありそうでう。

«Appleがゴールドマンにクレカ提携解消打診