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2023年9月20日 (水)

50年住宅ローンの扱いにつて…

九州・沖縄で期間50年の住宅ローンを取り扱うケースが増えているようです。

50年住宅ローン、九州・沖縄で拡大 預金確保の狙いも - 日本経済新聞 (nikkei.com)

超長期の住宅ローンとしては住宅支援機構の「フラット50」があり、金融機関でも「○○銀行_フラット50」として取り扱うケースもあります。
「フラット50」の場合、対象となる住宅物件が「長期優良住宅」の条件に合致しており、申込時の年齢が満44歳未満(親子リレー返済を利用の場合は満44歳以上の方も申込み可ですが、完済時80歳まで)であれば、金利は高めですが(現状2%強)全期間固定金利で借り入れができるようです。ただし、借入金額は購入物件価格の60%までになっているため、フラット35と併用して利用することで購入額の100%借入することも可能のようです。

一方で、西日本シティ銀行のように銀行独自で最大50年間の返済期間(完済時の年齢は81歳未満)を設けている商品を扱っている例もあります。
住宅取得資金だけではなく、カードローンやマイカーローンなど既存の借入金もまとめて組み入れることができる、返済を最大5年間据え置くことができるなど、商品性に特徴を持たせているようです。

住宅ローンという個人を対象とした商品性を考えた場合、高齢化も進み人口が減少する環境下、新規の住宅着工戸数が2022年度で86万戸まで減少、2040年には55万戸になるだろうという予測もあり、住宅ローン市場は縮小する一方で競争は激しくなる傾向が更に顕著になると思われます。
この様な中、借主の負担を軽減する=返済額を抑えるには、金利と借入期間の組み合わせで決定することを考えれば、超長期の融資期間を設けるのは当然の結果と思われます。しかし一方で、50年間、借主が契約通り債務を弁済し続けることを確約できるかという点では、100%確約されることは難しく、返済を滞るリスクは高くならざるを得ないでしょう。
しかし、ローン利用者の状態を長期的にモニタリングする管理体制を整備することで、返済が厳しくなる兆候を未然に捉え早目の対策を講ずることで、想定されるリスクを軽減することは可能になるのではないでしょうか。

これまでも言われていますが、住宅ローンを獲得するまで手間暇かけるが、契約後、正常に返済を続けるローン利用者の管理は殆ど行わず、知らないうちに他行に肩代わりされるという事例が頻繁に起こっていることを考えれば、個人向けの安全な運用資産として残高を維持するためには、新規獲得に力を入れるよりも、既存の住宅ローン利用者の管理体制を徹底することで他行流出を予防る対策を講ずることが最も重要になるのではないでしょうか。

2023年7月19日 (水)

PBR1倍割れ金融機関は改善策をどのように考えるべきか…

PBRが1倍を割っている地方銀行が、問題を改善すべく対策を講じているという記事です。

地方銀行、PBR1倍割れ改善に動く 横浜銀行はM&A融資増 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

記事にもあるとおり、PBRはROE(自己資本利益率)にPER(株価収益率)を乗じて算出されますが、式を分解すると次の通りになります。
・ROE(%)=当期純利益(PL)÷株主資本(BS)×100
・PER(倍)=株価÷EPS(=当期純利益÷発行済株式総数)
・PBR(倍)=株価÷一株当り純資産(BS)

発行済み株式数を減らすべく自社株買いを実施するケースもあるようですが、収益性を如何にして高めるかが重要なポイントであり、収益性の高いファイナンスへの取組みや新たなフィービジネスへの取組み等中期経営計画に盛り込むケースが多くなっているようです。
そもそも、PBRが1倍を下回っているということは、株価がその企業の純資産よりも安く、いま企業を解散した方が価値がある、つまり市場価値が解散価値を下回っているということで、市場から評価されていないことを意味しており、東証ではこの点を問題視しているようです。

本年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」ということで、上場企業に対して要請していますが、上場銀行の多くは自社判断で東京証券取引所のプライム市場での上場を選んでおり、その要請に対する対応とも言えます。
東証が示した内容は「cg27su00000048bt.pdf (jpx.co.jp)」となっています。

現状分析した上で改善すべき項目を具体化、改善すべき施策を計画として取りまとめ、その内容を開示することを求めているようですが、以下のポイント等も留意点として示しています。
・目標とする指標は、自社の状況を踏まえ、目標の設定に当たっては、具体的な到達水準・到達時期を示す方法のほか、目指すレンジを示す方法や、ROEやEPS(1株当たり利益)の成長率など変化率のトレンドを示す
・PBR1倍割れは、資本コストを上回る資本収益性を達成できていない、あるいは、成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆される1つの目安と考えられる

重要なのは、一過性の対策ではなく、持続的な成長に向けた収益強化策が期待されているということですので、金融機関も経営内容を根本から見直す必要があるということでしょう。
記事に書かれている対策は、上場企業としての株主対策という観点から、どれもが指摘されている数字を改善するための一つ手法のように見えますが、やはり、持続的な成長による収益強化をどのように実現するのか、そのためには、金融機関としての存在
意義は何か?各金融機関がおかれている環境から、見直すことが必要ではないかと感じます。
特に、株主ではなく、事業収益の糧となっている利用者=顧客の立場を最優先し、顧客価値の極大化を実現する事業モデルを構築することに重点を置くべきとも思います。新たなIT技術を利活用しながら、経営側にとっても具体的メリットのある施策を打ち出してもらいたいものです。

2023年5月 5日 (金)

アップルの預金サービスに関する記事です…

4月17日から始まったアップルの新しい預金サービス、最初の4日間で9億9000万ドル(約1360億円)もの預け入れがあったとのことです。

アップルの新預金サービス、開始4日間で約1360億円の入金(Forbes JAPAN) - Yahoo!ニュース

Appleの預金口座開設は30秒 既存銀行は生き残れるか - 日本経済新聞 (nikkei.com)

アップル預金口座の魅力は、一般の銀行の平均預金金利と比べ10倍以上の4.15%という金利にありますが、米金融大手ゴールドマン・サックスのバンクUSAとの提携により提供されているそうです。
ただし、
誰もが利用できるわけではなく、米国在住者でApple Cardを契約しているユーザーが対象であり、iPhoneのウォレットアプリから口座開設画面に進み、アメリカの社会保障番号(SSN)の入力と質問への回答だけで口座が使えるようになるようです。
これまでのサービスでは、アカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料ででき、後払いサービスも利用できるのですが、今回の預金サービス提供により、「製品・サービス販売」「決済」「貯蓄」「ファイナンス」の全ての機能がアップル経済圏で利用できる環境が整ったということでしょうか。

Apple Cardは、2019年にスタートしたアップルとゴールドマン・サックスが提供するクレジットカードで、こちらもiPhoneのウォレットアプリからすぐにカードを作ることができ、Apple Pay(NFCを用いた非接触決済)であればすぐに使えるものですが、与信枠の上限は低く抑えられており、低所得者や学生でも利用できるようにカード利用者のすそ野を広げているのが特徴のようです。
カードを利用すると、2~3%相当のキャッシュバックが「Apple cash」の預金口座に貯まる仕組みとなっているのですが、今回提供される預金口座と関連付けられることで、キャッシュバック資金が高金利の預金に預け入れられ、お得感が更に高まるものと思われます。

クレジットカードの利用に関しては、利用履歴等の情報を活用して「与信判断モデル」を体系化するメリットがあると言われていますが、利用者層のすそ野を拡大することで、独自のモデル構築の環境整備にも繋がっているのではないでしょうか。

また、この預金口座の上限は米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保護上限と同じ25万ドル(約3400万円)に設定されており、保護の対象にもなっているようですから、利用者側としては安心感もあるのでしょう。米国では、大手地銀の破綻が顕在化していることを考えると、安全で高利回り、各種サービスが付加されている点を考えると、預入額は更に増加しているものと思われます。

今回のサービスは、米国在住者向けのサービスでもあり、Iphoneユーザーの相対的利用者数が多い日本国内では利用できるものではないのですが、低金利環境下の日本において、この様なサービスが提供されるとなれば反響は想像以上かも分かりません。
企業経営という観点からすると、適用する金利負担を維持することができるのか否かがポイントになるのでしょうが、クレジット機能による手数料収益や後払いによるファイナンス収益も含め、総合的に収益事業化できるめどが立っているということなのでしょうか。
国内でも、携帯キャリアであるドコモ(=じぶん銀行)やソフトバンク(=PayPayi銀行)も独自のクレジットカードと銀行預金とを連携させたサービスを提供していますが、普通預金金利は0.001%という状況であり、太刀打ちできる状況ではないのが現状なのでしょうか。

2023年3月30日 (木)

「デジタル円」に関する記事ですが…

日本銀行の黒井田総裁が、「中央銀行デジタル通貨」に関して、個人的な見解ですが「今後実現していかなければならない」と強調したそうです。

日銀の黒田東彦総裁、デジタル円「実現していく」 重要性強調 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日本銀行としては、現時点で「中央銀行券であるデジタル通貨」の発行はしないと表明していますが、2020年10月に公表した「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」に沿って、2021年4月から「中央銀行デジタル通貨=CBDC」の実証実験を進めています。本年4月からは「パイロット実験」を実施するそうで、2023年2月17日「CBDCフォーラム」への参加希望者を対象とした説明会を開催すると発表していますが、消費者や利用できる店舗が直接関与して実際の取引を行うのではなく、中核を担うシステムと既存の仲介システムとの連携や各種デバイスとの連携等を想定した実験をすると言われています。

社会・経済のデジタル化はグローバルで進展することは避けることができない状況にあり、SDG‘sという観点から「金融包摂」を実現する手段としても積極的に取り組まれており、日本だけではなく、各国の中央銀行も、積極的に検討を進めています。
中国で実証実験が行われている「デジタル人民元」はスタートからの取引高が6000億元(約1兆円) を超えたと言われていますし、ユーロ圏の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)も2020年に報告書を公開し検討を進めており、今後世界規模で利用が進む可能性は高いのではないでしょうか。

仮想通貨の一つとしてブロックチェーン(分散型台帳)上で設計される「ステーブルコイン(=担保などにより価格が大きく変動しない安定したコイン)」の法定通貨担保型に関してはCBDCに近い性質を持っていますが、Fasebookが発表したステーブルコインの一種である「Libra構想」は実現されることなく幕引きとなっていますし、米国で発生したコイン発行者である民間事業会社の運営管理体制の脆弱性により価値が暴落する等問題も顕在化し取締り強化が検討される中、国内では地方銀行が「ステーブルコイン」発行の実証実験を開始することが発表されています。

日本銀行としては、中央銀行券としての「デジタル通貨」を発行するものではなく、現在、民間事業会社が積極的に提供している「デジタル決済(電子マネーやQRコード決済等)」サービスを補完する観点から機能検証するという立ち位置を示しています。
全ての国民が「何時でも、どこでも、便利に、安全かつ安心して、適正な対価」で利用できるサービス環境として、デジタル決済の基盤が確立できれば良いのですが、消費者が利用できる機能(=ICカード媒体やスマートフォンアプリ)の提供と同時に利用できる場所=ネットワークの整備(現実と仮想環境)、更には、資金決済に関する仕組み(全銀ネット等の既存インフラを利用するのか、ブロックチェーン等の最新技術を利用し新たに開発するのか)をサービス提供事業体が単体で構築するとなると、必用となるインフラ整備への投資資金をどのように回収するのか考えなければなりません。「決済と送金」という事業のみではROI=投資対効果の極大化は難しいのが現実であり、民間主体での実現は厳しいのではないでしょうか。

そういう意味からも、国民生活向上の政策の一環として整備するのであれば、国と民間が相互に協力・費用負担し合いインフラを整備して運用する仕組みを確立することがベストと思います。現在、金融機関が提供する「預金」はある意味デジタル化された通貨であり、中央銀行である日本銀行も係わり安定した決済スキームが構築されている点を考えるならば、「ステーブルコイン」発行の実証実験のように金融機関が主体となり積極的に事業化を検討するよう声を上げてもらいたいものです。

2023年1月25日 (水)

事業成長性担保に関する記事です…

以前より話題となっていた「事業成長性担保」について、法制度面の改正も含め2023年中に実施される可能性があるとの記事です。
金融庁が25日の金融審議会(首相の諮問機関)に新制度案を示し、専用の信託免許を創設し認可を与えた金融機関を通じ解禁するということで、今国会に法案を提出するそうです。

事業成長を担保、新しい信託制度創設へ 金融庁検討: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「法人の総財産」である動産や債権、契約上の地位、知的財産権、のれん、更には、将来の事業価値=キャッシュフローまで包括的に担保として評価するものです。
動産や債権、契約上の地位、特許などの知的財産権に関しては、既に「質権」や「譲渡担保」により担保として活用できる道筋はできていますが、包括的な担保として捉えるならば、会社として事業を継続、維持・拡大できるのか「事業性」をどのように評価するのがポイントになりそうです。
融資実務における5大原則「安全性・収益性・流動性・成長性・公共性」の内、安全性の原則では「契約どおり債務履行できるのか判断すると同時に、万が一不履行の場合を想定し、担保や保証で保全措置を考える」ことが必要となります。これまでの融資慣行では「担保と保証の保全措置」に重点が置れていたのですが、今回の改正では、契約通り債務履行できるか=事業を継続・維持・発展させることは可能なのかという、事業性の評価ノウハウが重要な要素になるものと思われます。

このような観点から考えるとすれば、審査の入口段階で、担保の対価となる事業価値の評価の算定根拠を「利用者である事業会社」に正しく説明できるようにすることも必要になるのでしょうし、プロジェクトファイナンス等で利用される「コベナンツ条項」の取り扱いなども重要になりそうです。
制度としては、担保権者としての権利を守る対策等、課題と思われていた点については「信託契約」を利用することである程度確保できていること、利用者側の保護という観点からは、当該担保権の利用をできる金融機関は金融庁の認可を前提にするため乱用は防げるということを考えれば、それなりに評価できるのでしょうが、これまでの金融機関実務で「事業性の価値評価」を実施できるノウハウが組織として蓄積されているかという点を考えれば、どこまで普及するかは金融機関側の体制面の整備次第ということになるのではないでしょうか。
ここ数年「担保や保証に過度に依存しない、事業性評価に基づく融資」の励行を指導されてきましたが、なかなか、改善できていないという現況を考えれば、 法改正されたとしても、記事にある「不動産に依存した融資慣行が転機を迎える可能性がある」という点はどうなのでしょうかね…

2023年1月14日 (土)

デジタル金融による事業収益化は可能なのか…

ゴールドマンサックスが部門別損益を初めて公表しましたが、デジタル金融部門では大幅な損失を計上しているとの記事です。

ゴールドマン、デジタル金融の損失開示 3年で30億ドル: 日本経済新聞 (nikkei.com)

先ごろ、全従業員のおよそ6%にあたる3200人の人員削減を行う事が判明していますが、3大事業部門の中でデジタル金融部門が足を引っ張っているイメージのようです。

日本では、従来の金融モデルでは成長が難しいのではないかとのことから、、Web3.0等における最先端のイノベーションの実現を目指すべく、金融庁も含め、政府が主体となり「デジタルと分散型金融への取り組み」を強化していますが、当該分野で先行するアメリカにおいて、デジタル金融部門での本格的な収益モデルは未だ確立されていないということでしょうか。

Web3.0そのものの定義が明確になっていない状況下、デジタル金融分野では「決済と送金」業務がメインとなっており、ここから高収益モデルを確立することは難しいのは当然のことと思われます。低コストでIT化=事業化を実現できたとしても、運用管理面=特にマネロン対策などを強化するコスト等を考えれば、総合的な収益性は低くならざるを得ないということでしょうか。
また、ファイナンス分野においても、初期段階では儲けが出ていても、今後、与信管理という面を考えればコスト増が予想されます。
これまで実現している事業モデルは、どちらかというと、利用者に対する利便性向上をうたったものが前提になっているように感じられますが、採算割れせず一定の利益を計上できるだけのビジネスプランとして確立するには、まだまだ時間がかかるようにも思います。

バックキャスティング思考からすると、どのような未来像を描けるかが重要であり、それを実現するために今後の検討ステップを未来から現在に遡って明確にすることがポイントのはずですが、「未来像」が明確でない状況で、既存の業務を簡素するために新たな技術を活用するだけでは、新たな果実を生み出すことは難しいのでしょう。

アメリカでは昨年暮れ以降、景気減速への懸念が強まってきたことから、大手金融機関は相次いで与信関係費用の増加により減益予想の決算を発表していますが、アメリカの景気が減速してくると、円高の動きが強まりやすくなり、我が国も輸出関連産業を主体に景気後退に陥る可能性も出てくることが予想されます。

コロナ後、政府は経済活動重視の政策に転換していますが、世界経済(中国を含む)の減退、一方で国内金利の上昇というマイナス要素を勘案すると、国内金融機関の各種引当コストは今後増加する可能性も高く、収益性は更に悪化する懸念があります。
「未来像」を描けていない現状で、デジタル金融に代表される新規事業により減益要因を補填するまでには、至らない状況が続くのではないでしょうかね…

2022年12月14日 (水)

JR東日本が銀行業務に参入するようですが…

JR東日本が、デジタル金融サービス「JRE BANK」を2024年春に開始すると発表しました。

JR東、ネット銀行に参入 2024年春にスタート ATMの現金引き出し手数料無料 - ITmedia NEWS

楽天銀行と提携し、銀行代理業ライセンスを取得して実現するようですが、住信SBIが提供している「NEOBANK」のサービス内容と同じスキームかと思います。
6月のブログでもコメントしましたが(http://www.hfmc-honda.com/index-BLOG_20210622.html)必然の流れなのでしょうが、検討すべきポイントは多々あるような気がします。

JRBANKの目指すコンセプトでは、既存のサービスを統合して「新たなデジタル金融」を目指すとのことですが、ここに、銀行業務をどのように組み込み付加価値を生み出すかがポイントになるかと思います。駅のATMによる現金引き出し手数料が無料になるというだけでは、顧客を獲得するにはインパクトは低いような気もしますし、おそらく、東急電鉄のように発券機をCDとして利用できるようにする機能も採り入れるのではないかと思いますが、今後、現金引き出しニーズはどこまであるのかを考えると、インパクトは低いでしょう。
ポイントサービスとの連携に関しても、先行するNEOBANKのJALマイレージ、Tポイント、山田ポイント等急拡大している様子がない点を考えると、どこまで訴求力があるのかも疑問です。
送金手数料を優遇するという点に関しても、フィンテック系企業の台頭により競争環境が激しく、その点でもメリット感は無くなるのではないでしょうかね。

やはり、鉄道+ステーションとしてのリアル環境をどこまで活用することができるのか、貯蓄とファイナンスをどのようにして組み込むことができるのか、付加サービスをどこまで拡充できるかがポイントになるような気もします。
政府が力を入れている「貯蓄から投資への転換」を後押しする対策として、少額投資非課税制度(NISA)について、投資枠の上限を拡大し、年間で計360万円、生涯分で1800万円とする案を軸に政府内で検討を進めているようですが、NISAに関連する商品を利用する際に何か付加価値を提供できるようにするとか、ファイナンスを利用する際に適用金利以外の付加価値を提供する等、企画力が試されるのではないでしょうか。

一方で、口座開設の際や口座利用の動態把握等「アンチマネロン」対策など管理面での負担が大きくなることや、個人情報保護対策の強化も視野に入れる必要があり、銀行代理業のライセンス取得という形態であっても体制整備面でも検討すべき点が多く、収益性はどうなるのかも検証する必要はありそうです。

2022年10月 9日 (日)

スマホ送金「COTRA」開始の記事です…

メガバンクが主導する、スマホプリを利用した個人間少額送金サービの提供が11日から開始されます。

スマホ送金「ことら」11日開始 3メガバンクなど20行参加: 日本経済新聞 (nikkei.com)

決済サービスに関連するコメントは、8月18日のブログでも「本田伸孝のつぶやき (hfmc-honda.com)」記載しましたが、どれくらい普及するのでしょうかね…
銀行振込
のように口座番号ではなくメールアドレスや電話番号で送金ができるものですが、基本的には「ことら」のサービス基盤に登録された複数のアプリ間での利用がベースになり、現時点では、記事にあるアプリの他は地方銀行(広島・福岡・十八・熊本)が提供するアプリのようで、今後、他の地方銀行も参加したとしても、これまでの銀行間送金を凌駕するまでに拡大することは難しいのではないでしょうかね。
そもそも、各銀行が提供するアプリがどれ位普及しているかにもよりますが。。。

また、米国でも同様のサービスが提供されているようですが、今年に入り不正利用が急拡大しているという記事があります。
米送金アプリのゼル、「不正被害急増」 米議員調査: 日本経済新聞 (nikkei.com)
銀行口座が紐づけされていることら、不正に引き落とされる可能性があるようです。米国では、銀行側は不正引き落とし額は全額補償する扱いのようですが、今回「ことら」が提供するサービスの場合、補償範囲はどうなんでしょうか。「ことら」の運営サイトのページでは詳しく述べられていないようです。(よくある質問 | ことら (cotra.ne.jp)
口座番号や携帯電話番号、メールアドレスを登録することが使用する際の要件になっているようですので、ショートメール等を利用した詐欺行為により振込させられる可能性があるということは想定されていると思います。利用金額の上限が10万円と少額であり影響は小さいと考えていると仮定しても、同一日に複数回の利用はできない等の回数制限を設けていないのであれば、高額の利用になる危険もあるはずです。

利便性のみを前面に出した告知になっていますが、安全面等に穴は無いのでしょうかね。アンチマネロン対策の強化が指摘され、資金移動業者に対する管理体制の強化を求めている状況でもあり、銀行が主体になるサービスでもあり広義の安全対策はしっかりできていることを期待したいものです。
今回のサービスは、銀行間の振込手数料が高いという批判に対処することも一つの要因としてありますが、やはり、サービスを先行する資金移動業者対策がサービス化の目的と考えることが妥当ではないかと思います。銀行のネットバンキングアプリと連携することも視野に入れているようですが、記事の最後にもあるとおり、少額資金決済の主役になることは難しいのではないでしょうかね。

2022年9月 7日 (水)

外貨定期預金が大幅増加という記事ですが…

9月7日の外国為替相場では、1ドル=144円台となり、1998年8月以来24年ぶりの円安ドル高水準を更新しましたが、 円安が急激に進行する中、個人による外貨定期預金の預け入れが急増しているようです。

個人、外貨定期預金が大幅増 ソニー銀行は金利10倍超に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

今回の円安は、諸外国がインフレを抑制すべく政策金利の引き上げを実施す中、日本だけが、金融緩和=低金利政策を維持していることに起因すると言われていますが、日銀や日本政府の態度が明確でないため、円安傾向は今後も続くであろうと予測される方々も多いようです。
年初のドル円相場は115円29銭@ドルでしたが、その後上昇を続け、4月1日に122円50銭@ドルとなり、それ以後上昇を続けており、ついに、心理的節目ともいわれた140円を超えてしまいました。

このような環境下、5~6月頃は手持ちのドルを円に交換する個人の方が増える傾向にありましたが、新聞記事によると、この半年で外貨定期預金を利用する個人がが急増しているとのことです。表面上の金利が日本の定期預金金利=0.002%と比較すると1000倍以上になることから魅力があると考えられているのでしょうが、「為替リスク」というものを、どの程度、利用者に説明しているのか懸念されます。

預け入れた時と払い出す時の円と外国通貨の交換比率=為替レートの差により違いが生じる事を「為替差損」といいますが、6カ月や1年間の預け入れ金利がいくら高くても、期日での交換比率が低くなっていれば手許に戻ってくる円貨は元の金額を下回る危険(~為替変動リスクといいます)があります。
例えば、100万円の円を100円@ドルの時点で、年5%の米ドル1年定期預金に預けたと仮定した場合のイメージが以下のようになります。
Gaikayokin

円の価値がが5円高くなり95円@ドルになった場合は、税引前の元利合計額を円に換算しても、100万円の元本を下回ります。
更に、金融機関の場合は、円を預け入れるときと払い出す時では、換算する際のレートに2~4円の差=手数料があるのが一般的であり、その点も考慮した上で、元本が目減りするのかしないのかを見極める必要があります。

記事では、当該「為替リスク」の問題点について、最後で簡単に述べているだけですが、外国為替に関する知識が豊富でない一般個人の消費者に対しては、もう少し配慮した情報提供を望みたいものです。
また、商品を取り扱う金融機関に関しても、監督官庁が指導する「顧客本位の業務運営」を実践する上で、預入時の円の相場が期日経過時点でどのようになると損失が発生するのか、正しく説明・理解をしてもらった上で、契約してもらうことも必要になります。
定期預金商品の表面金利だけではなく、円に換算した後の元利金合計額がどの程度になるのか、実質的な利回りについても説明できるようにすべきではないでしょうか。

また、このようなリスクを回避すべく、解約時の円への交換レートを事前に契約する(=為替予約)ことも可能ですが、今回のように急激に円安へシフトする際のメリットを受けることは出来なくなり、金利差だけのメリットを受けることになります。
一般個人の方々は、おそらく、今後も円安が続けば、ドルを円に換算する際に儲かるだろう、ということから外貨預金を選択しているケースも多いのではないかと予想されます。商品を提供する金融機関側は、外貨の取扱手数料を得るメリットもあると予想できますが、利用者に対して商品の特性を正しく説明した上で契約する営業体制を強化してもらいたいものです。ネットでの販売でも当然工夫されているとは思いますが…

2022年8月18日 (木)

決済サービスに関する記事ですが…

資金移動業者であるフィンテック企業が、全銀システムを利用して資金移動する処理が可能になるようです。

決済アプリで銀行送金 23年にも、事業者の日銀口座条件: 日本経済新聞 (nikkei.com)

スマフォによる決済専用アプリが普及している環境下、決済の一つとして銀行などへの送金による手続きが安い手数料で実現可能になれば、利用する消費者にとっては有難いサービスになるのではないでしょうか。
一方、銀行としても、送金業務に関しては、資金移動業者対策として手数料が発生しない扱いとして、スマフォアプリを利用した個人間の少額送金サービの提供を開始することを公表しています。

少額送金「ことら」10月11日開始 メガバンクの手数料無料に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

2021年5月に施行された「改正資金決済法」において、資金移動業者は、資金移動対象金額に応じて3種類に分類され、登録手続きや組織上の管理体制面、報告義務、保証金の供託等で制約に差はありますが、おそらく、取扱上限額が100万円までの第二種移動業者を意識した扱いになるかとは思いますが、銀行界も含め、競争が激しくなるのは間違いないでしょう。

今回の扱いが実現した際に大きく影響するのは、支払手段としての為替業務だけではなく、アプリ口座への入金となる、銀行を介さずフィンテック企業が提供する口座に給与を直接振り込む「デジタル払い」の給与支払いが解禁になることではないでしょうか。
安全面で躊躇されていた扱いが、システム面で安全性が担保されれれば、生活に必要な決済口座として利用する消費者は更に増えるのではないかと思われます。
銀行の普通預金に預けていても利息も見込めない現在の金利環境を考えれば、決済アプリで適用されるポイント還元サービスというプラス要素は消費者にとってメリットが高くなり、これまで利用されている銀行の預金口座離れの要因になる可能性も高いでしょう。
日常の生活に必要な
資金、将来のための蓄えとしての資産運用資金、一時的に必要となるファイナンスによる調達資金、万が一のための保障を補う資金という観点から、それぞれのサービスを連携させる事業体=グループが現れれば、銀行業の免許を取得することなく、これまでの金融機関と同等のサービスを提供できるようになる可能性もあります。

サービス対象を個人に限定することで、取扱上限金額に100万円という制約はあっても決済業務も扱えることが可能となれば、個人専用の総合金融サービス事業体として活動するフィンテック企業も現れるのは時間の問題と思いますが、金融機関も、企業としての存在意義を改めて考え直す時期が近づいてきていると感じるのは私だけでしょうか…

«経営課題をAIで分析するとの記事ですが…