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2022年7月23日 (土)

経営課題をAIで分析するとの記事ですが…

横浜銀行が、人工知能(AI)を活用して経営課題を推計するモデルを開発するとの記事です。

横浜銀行、AIで企業の経営課題を分析 ミライズと開発: 日本経済新聞 (nikkei.com)

企業の財務情報における業績や預金口座の取引履歴など銀行が保有する情報と経済指標などの外部情報を組み合わせることで、企業の経営課題を推定できるモデルを体系化するようです。
これまで、金融機関が推進していた「事業性評価」に基づく課題解決型の営業活動に関しては、一定規模以上の取引先が主体であり、規模が基準に達していない中小小規模企業に関しては具体的な対応ができていなかった点を考えると、収集した情報を多面的に活用できるように人工知能(AI)機能を活用するのは一つの対策といえるでしょう。

これまで人的管理を主体とする対象企業群には入らない取引企業の中から、企業として想定されるニーズをパターン化した上で絞り込むということかと思います。しかし、収集されている財務データも含めた企業情報と決済口座の動向から、どこまでの課題を明らかにすることができるのでしょうかね。
決済口座情報を活用した運転資金需要へ対応する取り組みは既に実施されており、目新しいものにはならないと思いますし、全ての預金取引を一金融機関に集中している企業も少なく、どこまでの情報として捉えるのか、基準を設けたとしても有効な情報と判断できるのか限界がありそうです。
一方で、財務分析を主体とした経営課題を発見する手法に関しても、既に各金融機関が導入している財務分析ツールにより分析レポートとして提供されているケースが多い点を考えると、新たな発見としてパターン化できる要因はあるでしょうかね。

マクロ的な指標も考慮するということですが、昨今の為替相場(円安)や輸入がベースとなる原材料価格の高騰等が、企業業績にどの位影響があるのか等に関しても、業界情報を参照すれば業種等からある程度類推することも可能ではないか思います。
最近、人工知能(AI)の機能を活用するという件の事例は多いのですが、よくあるケースでは、実際にAIツールを用いて導き出した内容を検証すると、これまでの経験値で考えられていな内容と同じであり、目新しいものではないという事も多々あります。

企業の倒産リスクを判定する信用リスクモデルを体系化する場合、色々な手法が提供されており、統計モデルである「判別分析,ロジットモデル,ハザードモデル」や、オプション理論を用いたオプションアプローチモデルである「構造モデル、外生変数モデル」の2つに分類できますが、様々な観点から評価検証されています。

人工知能(AI)機能は、ある意味、これら複数のモデルを組み合わせたハイブリッド型も考えられますが、「何を導き出すのか(目的変数=例えば倒産する可能性)」が重要であり、且つ、どのような情報をどのような手法を用いて体系化するのか明らかにしておくことが肝要ではないでしょうか。

2022年7月15日 (金)

本格的な中小企業支援が必要になるでしょう…

コロナ関連倒産が増加傾向にある中、想定以上に進む「円安」により今年後半は、円安関連も含め更に経営難による倒産が増加すのではないでしょうか。
また、コロナ関連による支援策でもある「無担保無利子融資=ゼロゼロ融資」の元本返済が本格化してきていますが、当該融資利用企業の倒産も顕在化しているようですし、第7波ともいわれるコロナ感染の拡大と円安による物価高騰により、今年後半の経済環境改善は見込みも薄く、今後も厳しい状況が続くことが予想されます。

金融機関としても取引企業支援の対策を考える必要もありますが、企業経営再生支援という観点からファンドによる対応を検討するケースも多くなりそうです。
コロナ再生ファンド、120億円で設立 中小機構など出資: 日本経済新聞 (nikkei.com)
今回のスキームでは、ファンドが債権を買い取り、様々な再生スキームにより支援することになりますが、基本的には地域金融機関単体では対策を講ずることは難しいが、再生が見込まれる企業を選定し支援することが前提になるのではないかと思います。

しかし、リーマンショック後の「金融円滑化法」による支援後の処理でも問題となっていますが、再生が難しい企業群=最終的に事業をクローズせざるを得ない事業体をどのように処理するのか、クローズ企業を対象とした処理を本格的に考える必要があるのではないでしょうか。
今後、更に問題となるであろう「ゼロゼロ融資」利用先に関しては、金融機関としても保証協会への代位弁済手続きにより実質的損失は免れ、且つ、最終処理も自らの手から離れることで事務処理負担も無くなることから、本格的な支援を考える金融機関は少ないのではないか、ということも懸念されます。

本来であれば、企業価値が毀損する前に、保有する経営資源(職員などの人員も含め)を最大限利活用した処理方法を考えることが必要となるはずですが、これまでも、当該処理に関しては先延ばしすることを前提とした対応を続けてきており、抜本的な対策が講じられていないのが実情です。
最終処理を実施する場合、債権は簿価額ではなく「再評価による時価額」で処理することとなりますが、簿価と再評価時価額の差は債権保有機関が損失処理をする必要があり、税負担等を軽減する措置を講ずるなど抜本的な制度的対策を利用できる環境を整備することも必要になるかと思います。
この点は、民間ではなく政府機関が主体的に活動することが必要になるかと思いますが、政府による経済対策の一つとして「お金を提供するだけではなない制度的な支援」として是非とも盛り込んでもらうことを期待したいですね。
また、金融機関においても、事業再生支援処理の課題でもある「クローズ型処理」を進める上で、経営価値が毀損する前の早目の対策について金融機関と会社経営者が共通認識で検討できる環境を早急に整備し、運用してもらいたものです。

2022年6月 4日 (土)

地域金融機関の取組み関する記事ですが…

地方経済の縮小均衡、低金利環境と従来の銀行業では生き残りが厳しい地域金融機関は、金利以外の収益源を見いだすべく農業や地域商社への参入を進めているという記事です。

地銀、アボカド栽培やコラボ商品 金利以外の収益源探る: 日本経済新聞 (nikkei.com)

2021年の銀行法改正により、銀行の創意工夫次第で幅広い業務を営むことが可能となっており、様々取組みが出てきていますが、グループ収益の柱となるまでには、まだまだという状況でしょうか。
特に、農業に力を入れる銀行も多くなっていますが、日本の農業経営体の大半は個人事業がベースとなっており、地域銀行が取引している実績は殆どなく、大半の個人事業体はJAグループによる購買事業・信用事業・共済事業による取引により経営しているのが実情です。
一方で、農業の個人経営主の平均年齢は67歳を超えているといわれ「高齢化と後継者不足」が全国的な問題になっています。5年おきに公表される農業統計では、個人の経営体が減少する一方で法人化された経営体が増加傾向にはありますが、全体数に占める割合はまだ一桁%の状況です。

このような環境を踏まえ、地域金融機関も地域における課題可決の一環として「農業関連」の事業へ参入するのでしょうが、JAグループによる事業内容とネットワークに勝る「生産から物流・販売まで総合的に体系化」したビジネスモデルを確立するには、地域銀行単体による対応では限界があるのではないでしょうか。農業に関わらず、地域における主要産業の経営主も高齢化と後継者不足という問題をか抱えている点を考えれば、単一事業ではなく、サプライチェーン全体に係る事業を関連付けたビジネスプランを確立し、同時に、全国の地域金融機関が総合的に連携する体制を整備することが重要ではないかと思います。

システム共同化を超えた、地銀どおしの連携も増えてはいますが、具体的に成果が出ている例はまだまだという状況下、地銀の生き残りを考えた場合、銀行法改正による業務範囲の規制緩和は、新たな事業転換を検討する上ではプラスの材料ではありますが、地域NO1の地位を前提としたこれまでの発想による対応では、効果のある改革を進めるのは難しいのではないかとも思います。
一方で、SBIホールディングが新生銀行の株主となり、傘下の第二地銀との連携を加味したビジネス展開を検討すると公表していますが、異業種からの参入等も含め新たな動きへ対抗する対策も検討する必要もあるではないでしょうか。

コロナ感染者は減少傾向にあり、GOTOトラベルも再開するとの見込みもあり、経済活動もようやく動き出す環境になりつつありますが、低金利政策の反動による円安、それにともなう物価の高騰により個人消費は停滞するのではないかとの見方もあります。低迷する経済が活性化するにはまだまだ時間がかかりそうであり、銀行経営が好転するという材料が乏しい中、不良債権の顕在化が経営の足元をすくう可能性も念頭に置く必要がありそうです。

2022年5月 9日 (月)

金融機関の異事業への参入報道が増えてきた…

昨年改正された「銀行法」では、出資及び業務に関する制限が緩和されたことから、グループ会社も含め銀行が新たな事業へ参入するケースが多くなっているようです。

電力に銀行初参入 山陰合同銀、再エネ活用で収益多様化: 日本経済新聞 (nikkei.com)
三菱UFJ銀、サイバーエージェントと提携し広告事業参入…同意得て匿名化の顧客情報活用(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

出資制限の緩和に関しては、事業承継支援による株式の保有期間が最大10年まで延長され、経営再建支援でも民事再生企業に限定されていた出資条件が緩和されています。更に、地域活性化事業会社に対しては100%の出資が認められており、支援企業の経営に銀行が当事者として参画することが可能となっており、山陰合同銀行による電力事業参入は、まさに地域活性化を目的としたものと思われます。
地域金融機関の生き残り戦略を考えた場合、地域経済を活性化させるための手段として、様々な事業モデルに銀行が参画し、運営してゆくことは必然の考えかたでしょうが、銀行業としての立ち位置を明確にすることも重要になるかと思います。

業務範囲の拡大に関しは、自身で開発したシステムやアプリの販売、登録型人材派遣、見守りサービス、蓄積された顧客データの分析やマーケティング、広告業務等が可能となっており、今回の三菱UFJ銀行の事業は、顧客データの活用と広告業をミックスした内容でしょう。
広告関連に関しては、住信SBIネット銀行が参入を表明しており、三井住友フィナンシャルグループと電通グループによる共同出資会社も設立されるなど拡大する可能性が高いと思いますが、今後、地方銀行と地元企業による地域密着型の広告関連事業も検討されるのではないでしょうか。

しかし、金融機関の場合、預金を預かるだけではなく、貸出し業務も手掛けており、以前より「優越的地位の濫用」や「利益相反」を回避すべく出資や業務に関しては制限が設けられていたわけで、改正されたことで緩和された結果ではありますが、やはり、金融機関という立場を加味した対応が必要になるでしょう。
特に、個人に関する情報の利用に関しては「匿名化」も含め、利用者本人による同意を得ることとが大前提であり、この点は、しっかりした対策を講じているか、監督する側も厳格な対応をした方が良いのではないでしょうか。上場会社は、特に、利益を最優先する経営を指向する傾向が強いことから、本来最優先すべきである顧客対応を疎かにした経営にならないように歯止めをかける「ガバナンス」をしっかり持つことも重要になると思います。
儲からない時代だからこそ、新規事業で儲けようという機運により「タガが外れ」てしまっては、本来あるべき利用者保護にならない結果になる可能性がある点を、考慮する必要もあるでしょう。

2022年4月11日 (月)

後継者不足による倒産増加の記事です…

後継者不足による倒産事例が、21年度で過去最高を記録したようです。

新型コロナ: 後継者難倒産が深刻化 21年度、東京都内で過去最多: 日本経済新聞 (nikkei.com)

東京商工リサーチによる調査結果からも分かりますが、実際の倒産だけではなく、隠れ倒産ともいわれる廃業は相当数増えているのが実情であり、今後、更に増加することが懸念されています。

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記事にもある通り、金融機関も本格的に対策を講じ始めているようですが、これからというのが実情ではないでしょうか。特に、令和4年度は、コロナだけではなく、地政学的なリスクの拡大による経済への悪影響も加わり、中小企業には厳しい状況が続くものと思われますが、政府による支援だけでは限界があるでしょう。
金融機関は、取引する事業会社が持続可能な経営を実現するには「何が必要なのか」見極め、最適な解決策を見つけ出し支援することが重要であると監督官庁も指導しています。一方、金融機関側には独自でリスクを負える覚悟を持った対応が必要になるのですが、金融機関経営者の意識が、なかなか変わらないのが現状であり、実効性のある活動ができていないように思われます。

金融機関の役割は今後益々重要性を増すはずですが、そのための対応策として、取引先の実状を正しく把握できるようにモニタリングする体制を整備する必要があるのではないでしょうか。
つまり、受け身ではなく能動的に取引先の変化を見きわめ、早目早目の対策を講ずることです。例えば、取引先企業の日々の口座のお金の動きの変化から、兆候を見きわめることですが、決算情報から得られる平均月商の値と、口座への入金金額の関係から一定の数値を予想、当該予想値が継続して下回っている場合、売り上げが減少してきている可能性が高い、または、取引金融機関を変更した可能性がある等、早急に状況確認をすべきであると、担当者へ通知する体制を整備することです。

本来であれば、金融機関の担当者が見極めなければならない情報ですが、全ての担当者が気付くことは難しいい為、IT技術を活用して判定する機能を確立することが考えられます。金融機関もDX対策を講じているようですが、顧客の動向変化を捉えるための情報活用は、今後益々重要になるのはずであり、取引先支援のための対策として活用してもらいたいものです。

2022年3月 9日 (水)

中小企業向けの支援に関する記事です…

岸田内閣は、新型コロナ感染症に加えウクライナイ問題の長期化も懸念されることから、金融機関に対して「中小企業向け支援」について要請したそうです。

資金繰り支援を継続 閣僚名で要請文、債務整理も促す: 日本経済新聞 (nikkei.com)

新型コロナに関しては3年目に入り、どちらかというとウィズコロナ=共存型の対応にシフトしつつありますが、ウクライナ問題による世界規模のロシア向け経済制裁は、日本国内に想像以上の影響を与える可能性があります。
コロナ禍では、飲食や旅行、サービス関連の業種などが大きな影響を受けていたのですが、ウクライナ問題は全産業の活動、更には消費活動にも重大な影響が発生しそうです。

物流機能の断絶により様々な原材料価格が高騰すると同時に、ロシア国内からの企業撤退も含め各種製品面の輸出にも影響が出ますし、金融面でもロシア向け債権のデフォルト危機、送金手段の断絶などなど、各方面に影響が出てきています。
短期で鎮静化するのではという、当初の見込みは期待を裏切られ長期化することが危惧されていますので、年内は、相当厳しい状況になるのではないでしょうか。
原材料価格の高騰による、様々な商品やサービス対価の高騰は、望まないコストプッシュ型のインフレに転換させる可能性がありますが、今後の世界経済、とりわけ米国経済の動向による為替情勢も考慮する必要があります。収入が増えない=賃金が上がらな家計にとって望まない物価上昇は影響が多きすげることを考えると、日本国経済は更なる停滞局面を迎えるのではないでしょうか。

このような環境下、中小企業経営はこれまで以上に厳しさを増すと思われます。コロナによる経済活動の停滞局面では、給付金という直接的な政策に加え「無担保・無利子」融資等の支援策により、ボディーブローのような影響を何とか堪えることはできましたが、体力を消耗している現在の状況下、ウクライナ=ロシアショックによるハードパンチに、果たして耐えることはできるのか、想像もつきません。

石油元売り会社への補助金を引き上げるなど政府により支援策は出されていますが、世界的物流の停滞やお金の動きの停滞による経済への影響が改善しない限り、国内経済が回復する可能性は極めて低く、これまでの政策の延長だけだは乗り切れないのではないでしょうか。
金融面に関しても「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」による新たな債務整理の扱いも公表され、同時に、「中小企業活性化パッケージ」 による抜本的な対策も打ち出されていますが(「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」及び「中小企業活性化パッケージ」の公表について:金融庁 (fsa.go.jp) )、どこまで効果が出るのかは不透明です。
令和3年度の金融機関決算は比較的好調でしたが、令和4年度は金融機関にとって厳しい事業年度になるのは確かであり、本当の意味で、金融仲介の役割を担えるのか否か、真価が問われるのではないでしょうか。

2022年1月28日 (金)

事業会社支援を再考する必要があるのでは…

令和3年度の金融機関決算は、増収増益になる可能性が高まっていますが、今後、数年は色々な意味で金融仲介機能のあり方を見直す必要があるのではないでしょうか。
東日本大震災の際の支援手法による取扱い期限が迫っているという記事です。
新型コロナ: 企業の債務返済、震災11年で新たな課題 地域金融が奔走: 日本経済新聞 (nikkei.com)

震災復興を促進すべく、震災前の負債を機構が買い取ることで、新たな資金調達を可能にする環境を整備することを目的に運用されていましたが、最終的に期限まで負債を買い戻して返済する必要があるのですが、震災後11年を経過し、期限を迎える対象先が今後多数発生するようです。
また、この2年間のコロナ禍における経済低迷が追い打ちをかけており、事業計画の策定も難しい状況になることも懸念されます。更に、後継者問題により事業そのものの継続をあきらめ、廃業を選択する事業者も、今後更に増えるのではないでしょうか。

東北エリアの金融機関も、資本制劣後ローンを取り入れるなど支援を継続している事例もありますが、ベースとなるのは、今後3~5年の事業計画を策定できることが基本となるはずです。しかし、コロナの影響も然りですが、金利の上昇や資源価格の上昇、株価の低迷等、経済活動に影響するマイナス要因を考えると、利益を計上できる事業計画を策定できる会社は少なく、難しいのではないかと思われます。
経営者の高齢化による後継者不足に加えコロナショックによる景気低迷により「廃業」する中小企業経営者が増加することで、地域における経営資源の散逸が積み重なることにより、優良な経営資源が活用されないまま喪失する可能性も高まるのではないでしょうか。

金融仲介機能とは、単にお金を融資するだけではなく、取引する事業会社が持続可能な経営を実現するには「何が必要なのか」見極め、最適な解決策を見つけ出し、金融機関が間接的に支援することと考えられます。その際、金融機関側は独自でリスクを負える覚悟を持った対応が必要になるのですが、この点は、監督官庁も指導しているポイントです。しかし、金融機関経営者の意識が、なかなか変わらないのが現状ではないでしょうか。

ゼロゼロ融資の取扱いにより金融機関の決算は良好のようですが、いち早く、真に求められる金融仲介機能の運営体制を確立できる金融機関は問題ないのでしょうが、従前の考え方を脱却できなければ、収益の源となる取引先の絶対数減少により、令和4年事務年度後半は厳しい状況になる金融機関が多くなるのではないでしょうか。

2022年1月10日 (月)

無担保無利子融資の返済開始問題ですが…

コロナ禍の影響による企業経営について、暫くは明るい兆しが見えないのが現況でしょう。
民間調査機関が公表する倒産件数は、過去50年以上例にならないほど低位で推移しているのですが、実情は厳しい状況が続いているのではないかと感じます。

倒産抑制でひずみ蓄積 21年、政府支援で57年ぶり低水準: 日本経済新聞 (nikkei.com)

倒産件数に計上されているのは、法的倒産(会社更生・民事再生・破産・特別清算)と私的倒産(取引停止処分・内整理)ですが、政府等の手厚い支援により、対象となる条件に合致する先が減少しているのは明白です。しかし、記事にある通り、本来は「倒産」の定義対象にならざるを得ない事業会社は多数存在しており、今年から開始されるであろう「融資返済」により資金繰りに窮する事業会社の増加は避けられないでしょう。

無担保無利子融資への対応、監督官庁の指導方針に関しては、以前のブログで記載していますが、問題の先送りであることは明らかです。
http://www.hfmc-honda.com/index-BLOG_20200804.html(2020.08.04)
http://www.hfmc-honda.com/index-BLOG_20211126.html(2021.11.26)
記事にあるとおり、返済余力の指標である実質有利子負債に対する「EVITDA」の倍率が5を超えているようですが、一般的に金融機関が融資判断する際には、当該数値は「7前後」が目安になるとい言われており、上限に近づいていると思われます。つまり、事業活動により発生する収益により負債の返済に何年を要するかを考えると、5~7年で完済することが目安となるはずですが、大幅に超える企業が多数存在するということです。

経済環境が改善しない状況下、政府も含め、「返済を一時的に猶予する等返済条件の緩和」を唯一の対策として対応しているのですが、果たして良いのか?疑問です。金融円滑化法の際も然りでしたが、返済を一時的に猶予したとしても、猶予期間中に事業そのものが改善して利益を出せる状態に改善しなければ最終的には破綻せざるを得ないということになるでしょう。

無担保無利子融資は信用保証協会の保証により保全されており、金融機関としてはリスクが無い扱いですが、今後破綻することにより代位弁済が増加すれば、結果、利息収入が期待できる貸出しが減少することになり、現在の地域金融機関の好決算は持続できないということになるでしょう。
単年度で決算内容が好転したとしても、コロナ禍が過ぎて以前の状態に戻った時点で苦戦するという事態になることも考えられます。自前でリスクを取らない経営を続けていれば「先は無い」ということになるように思うのは自分だけでしょうか。

2021年12月26日 (日)

クレジットカードの新たな取り組みでしょうか…

提携カードの発行を行うフィンテックベンチャーの「ナッジ株式会社」が、行政と連携した事業を開始するという記事です。

提携クレカのナッジ、小松市と連携協定 決済で地方創生: 日本経済新聞 (nikkei.com)

フィンテック企業が金融サービスへ参入する場合「決済・送金」という分野が多くなっていますが、今回は、クレジットカードの機能をベースに「提携」先に対して、収益の一部を還元する仕組みを活用、小松市が提携先になるということで、地方創生のにも役立つ可能性があります。
記事にもあるように、小松市出身の方が、ナッジのカードを契約し、ふるさと納税のサイトで利用できるようにすれば、ふるさと納税のメリットにプラスしてカード利用代金の一部も小松市に還元されるのではないでしょうかね。
利用者としては、ナッジ社が提供するカードの機能として通常のクレジットカードにない付加価値もありますが、小松市が提供するサービスを利用できる特典もあるようで、社会貢献というキーワードを訴求することで利用者拡大も見込まれる可能性はあると思います。

因みに、ナッジ社の提供するカード機能の特徴は、入会審査の基準を緩和しているのか、利用上限額が10万円と抑えられている一方で、審査から利用可能までのプロセスは簡素化されているようです。
・専用アプリによる申し込み(本人確認はマイナンバー、運転免許証、パスポートの電子認証ができるもの)
・審査後、一週間ほどでカードが発行される
・アプリで最終登録することで利用が可能になる
・年会費は基本的に必要ない
・2カ月は利息が付かない
・利用後、都合の良い時に全国のセブン銀行ATMで返済ができる
・返済予定についてアプリ経由で事前通知がある

入り口段階で、本人か否か最低限確認できれば、あとは、利用実績によるモニタリング管理機能を実装することで「リスク」は抑えることが可能であり、従来型の与信審査は必要無いということでしょう。
今後は、クレジット決済をベースに、保険や資産運用など他のサービスを追加拡充することで、リスク管理の強化も含め「使われるカード」になると思われます。つまり、「組み込み型金融」という位置づけでサービスの内容を考えることで、新たな金融モデルを作ることは可能と思いますが、その入り口として「決済」は重要なファクターとして位置づけることができるのではないでしょうかね。

最近流行りの、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(続可能な開発目標)のキーワードはポイントになるのでしょうが、利用者にとって何が必要なのか、結果として社会全体にどのように影響があるのかという点を明確にすることも必要と思います。
利用者が気が付かない点を洗い出し、サービスとして提供することで、結果として社会貢献ができる、それを利用者と社会が共有できる橋渡しになるモデルを構築することで、既存の金融機関モデルにはない新たな事業を実現できるのではないでしょうか。

2021年11月26日 (金)

コロナ対策における金融円滑化対応について…

金融庁が「中小企業等の金融の円滑化」について、政府当局者と各金融機関の代表との意見交換会を開催しました。

中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について:金融庁 (fsa.go.jp)

政府の経済対策の発表を踏まえたもので、金融機関に対しては、以下10項目の内容について要請されているようです。
1.資金需要の高まる年末に対する資金繰り相談へ、きめ細かな支援を引き続き徹底する
2.コロナの影響が大きい主要業種へ重点的な対応を行う
3.政府による「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に盛り込まれた各種支援施策の実施を踏まえた対応を行う
4.既往債務の条件変更や借換等へ、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を行う
5.貸出条件緩和債権の判定における「実抜計画」等の柔軟な取扱い含めた資金繰り支援を行う
6.貸し渋り・貸し剥がしを行わず、最大限柔軟な資金繰り支援を行う
7.官民金融機関-保証協会-再生支援協議会-REVIC等が密に連携し、事業者の実情に応じた経営改善-事業再生支援を積極的に促進する
8.政府系金融機関の資本性劣後ローンの積極的な実施と活用を図る
9.メイン・非メイン先の別にかかわらず経営課題に直面する事業者に対しては能動的に本業支援を行う
10.「経営者保証に関するガイドライン」の一層の浸透-定着に努めると同時に『自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン』への対応にも留意する

政府系金融機関による実質無利子・無担保融資制度(=ゼロゼロ融資)の来年3月までの延長や、事業者のニーズに沿った見直しを行った上での「新型コロナ特別貸付」の4月以降の継続の措置を講じる等、政府による資金繰り支援策は充実しているようです。
ここで、課題になるのが、金融機関が真の意味での「経営改善支援₋本業支援」を行えるか否かという点ではないでしょうか。
要請事項の4項から10項までについては、リーマンショック後に施行された金融円滑化対応を継承する内容でもあり、事業再生支援実務の中では重要なファクターとなります。
実抜計画=実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を如何にして策定するかに関しては、数年前から進められている「事業性評価による事業実態把握」がポイントになるはずですが、金融機関における取組み状況を見る限り上手く運用できるのか心配なところもあります。

コロナ禍でも金融機関の決算が改善基調にあるのは、実質リスクのない「ゼロゼロ融資」の取り扱いによる融資残高の増加による資金収益の改善と信用コストの低減が要因となっているはずです。ある意味、コロナ対策による資金繰り支援対応は事業の延命措置ともいわれており、これで良いのかという捉え方もあります。
コロナ克服後の新時代では、新たな事業転換の促進に舵を切るべきであり「事業性評価に基づく本業支援」の徹底が金融仲介に求められるテーマになるはずですが、金融機関自らがリスクを評価し取り込みながら活動する体質に変わることができるのかが鍵になるのではないでしょうか。

«顧客本位の業務運営に関する評価の記事です…