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2023年12月 5日 (火)

Appleがゴールドマンにクレカ提携解消打診

アップルが米金融大手ゴールドマン・サックスに対し、クレジットカードと預金サービスの提携解消を打診したそうです。

Apple、ゴールドマンにクレジットカード提携解消を打診 米報道 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

今年の4月に開始されたアップル預金、最初の4日間で9億9000万ドル(約1360億円)もの預け入れがあったとブログで紹介したばかりですが、早々にサービスの基本提携を解消するようです。本田伸孝のつぶやき (hfmc-honda.com)

アップルのサービスは、アカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料ででき、後払いサービスも利用できるのですが、預金サービス提供により、「製品・サービス販売」「決済」「貯蓄」「ファイナンス」の全ての機能がアップル経済圏で利用できる環境が整ったのではないかと思っていたのですが、想定したほど普及しなかったのでしょうか。
おそらく、利用対象者が「米国在住者でApple Cardを契約しているユーザー」と限定的であったことも影響しているのでしょう。

スマホ市場が成熟の域に入っている中、決済サービス「アップルペイ」 などiPhoneを使ったサービス事業を強化しているようですが、世界的規模での事業化を考えると、各国の金融制度との関係等も考慮する必要があり、想像以上に難しいのでしょうか。
また、通常の銀行預金よりも高い金利を付与するモデルであったことから、コスト負担を考えると金融事業全体としての収益事業化が厳しかったことも予想できます。

それにしても、新規事業への参入に対する評価に関しては、米国企業の判断が想像以上に速いのには驚きます。日本では、新規事業を開始した後、事業からの撤退も含め見直しをするとしても、相応の期間の実績を見た上で判断するケースが大半であり、ある意味「機を逸する」ケースも多々あるのですが、米国の企業は、様々なケースを想定した事業プランをしっかり立てているからですかね。。。

国内でも、携帯キャリアであるドコモ(=じぶん銀行)やソフトバンク(=PayPayi銀行)も独自のクレジットカードと銀行預金とを連携させたサービスを提供していますが、普通預金金利は0.001%という状況であり、既に取引のある銀行預金から乗り換えるメリットが低いことから爆発的に拡大している訳ではないのが現状でしょう。

また、国内の統計を見ていると、高齢化が進む中でもスマフォ市場は成熟期にあうようで、今後は、デバイス端末であるスマフォで利用できるサービスの種類と質を如何にして高めるかという「サービス化」へ対応できるか否かがポイントになるようにも思います。
その際にも、端末販促のための利便性を提供するだけではなく、やはり「マネタイズ=収益事業化」をどのように実現できるかが重要になるのではないでしょうか。そういう意味で、最近、ドコモなどファイナンス機能を取り入れているのは、収益性を確保することが目的なのでしょうか。

2023年11月20日 (月)

地銀の9月末決算に関する記事ですが…

地方銀行の決算が出そろったようですが、取組姿勢にもより増益組と減益組と分かれているようです。

倒産増加の影響は? 地銀4~9月期決算まとめ読み - 日本経済新聞 (nikkei.com)

金利上昇局面に入り、大手銀行収益はプラスに転じていますが、地域金融機関ではマイナスに働くケースも多くなっているようで、企業業績の低迷による不良債権処理費用の負担も影響しているようです。
金利上昇による経営への影響を考えると、以下の通りプラスに働くことは限定的であり、マイナス面の影響が大きいのではないでしょうか。
1.今回の修正による金利上昇は長期金利が中心であり、短期金利に連動する変動金利が中心である住宅ローンや企業向け貸出の金利に大きな影響はない。長期固定金利の住宅ローンや企業向け貸出、社債の金利には影響するものの、今後の新規貸出から段階的に反映されるため、直ぐにプラスに働くことはない
2.地域金融機関は、これまで政策金利や市場金利が横ばいで推移するなかでも、貸出金利を引き下げ、貸出残高を増やす戦略を採用しており、今後、日銀がさらなる政策修正に動いた場合も、すぐさま貸出金利を引き上げられるかは不透明
3.一方で、各種の悪化要因となるストレスの長期化により業績不振に陥る企業が増加、信用コスト面の負担が収益悪化につながる可能性がある
4.更に、地域金融機関は、余資運用において、超長期の円債保有を増増やしており、超長期金利の上昇は、むしろ、保有円債の評価損の増加につながる

やはり、3.の不良債権処理費用に関しては、今後、増加に転じるのは明らかと思われます。
これまでの、政策的な対応を加味すると、本来、市場から退場せざるをいない企業が延命措置(金融円滑化法による貸出条件変更、コロナ禍による助成金などの現金給付、ゼロゼロ融資による金融支援)により存続してきましたが、限界に近付いているのではないでしょうか。

金融機関としては、今後、本格的な事業再生支援に取り組むべき時期になると思われますが、体制面も含め対応できる状況になっていないしょう。不良債権処理費用の算定根拠となる「自己査定」による債権評価基準については、2019年の金融検査マニュアル廃止により見直しをすべきところ、7割近くの金融機関が未着手の状態にある点も懸念材料と思います。
過去の不良債権処理状況を年代別にみると、ここ10年以上低位に推移していますが、今後は上昇に転じ、金融機関経営を圧迫する可能性が極めて高くなるのではないかと思います。

Defolt

2023年10月19日 (木)

保証協会融資の債権放棄に関する記事です…

経営が厳しく金融債務の負担が大きい企業を再生支援する場合、私的整理等による再建を目指す際、計画立案を前提に債務削減=債権放棄による支援を行うケースが多いのですが、その際問題となっていたのが、信用保証協会の保証付き融資の扱いです。
記事にもあるように、民間金融機関が自前融資の債権を放棄しても、保証協会への債務は残ることになります。保証協会が計画を認めたとしても、保証債務を肩代わる原資は税金になるため、債権を放棄するには各自治体の議会による承認を得る必要があり、計画実現までに2~3カ月以上の期間を更に要するケースもありました。

保証協会融資、知事決裁で債権放棄可能に 29都道府県 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

全国47都道府県のうち、29の都道府県で議会承認を経ずに知事決裁で債権放棄を判断できるようになったことは、再生支援をする上では重要なポイントになるでしょう。
コロナ禍の際の支援策として実施された「ゼロゼロ融資(http://www.hfmc-honda.com/index-BLOG_20220110.html)」の返済が本格化、来年4月には最後のピークを迎えるようです。また、円安や原油高、更には、原発の処理水問題による海産物の輸出規制等中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しており、再生支援を求めるニーズは今後さらに高まるものと思われます。

ゼロゼロ融資は大半が信用保証協会の保証付きであり、信用保証の取扱い実績の推移をみても2020年に急増する一方で、今年に入ってから代位弁済の割合が増加に転じています。

Graph

本来、再生計画を立案する際には、その内容が「実現可能性の高い=実抜計画」または 「合理的で実現可能性がある=合実計画」である必要がありますが、計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないことという前提条件があり、債権放棄の額を確定した再生スキームを円滑に行う上でも、今回の記事にある扱いはプラスになるのではないでしょうか。

しかし、現時点における金融機関の対応は、具体的な再建計画を立案するというよりも、約定返済を一時的に猶予する条件変更で対処するのが一般的であり、問題の先送りという状況のようです。
今年に入り倒産件数は増加に転じているようですが、来年には金利引き上げの可能性も出てきた中、経済活動の低迷が続き経営に困窮する企業は更に増加するのではないでしょうか。
中小・小規模企業が、本当に再生できるのか否か見極め支援する体制を整備するには、地域金融機関の役割が重要となりますが、積極的に取り組んでいる金融機関が見当たらないのは、保証付き融資であるがゆえに金融機関が直接的にリスク負担する必要がないからなのでしょうか。
金融機関の運営姿勢に課題があるように思われます。

2023年9月20日 (水)

50年住宅ローンの扱いにつて…

九州・沖縄で期間50年の住宅ローンを取り扱うケースが増えているようです。

50年住宅ローン、九州・沖縄で拡大 預金確保の狙いも - 日本経済新聞 (nikkei.com)

超長期の住宅ローンとしては住宅支援機構の「フラット50」があり、金融機関でも「○○銀行_フラット50」として取り扱うケースもあります。
「フラット50」の場合、対象となる住宅物件が「長期優良住宅」の条件に合致しており、申込時の年齢が満44歳未満(親子リレー返済を利用の場合は満44歳以上の方も申込み可ですが、完済時80歳まで)であれば、金利は高めですが(現状2%強)全期間固定金利で借り入れができるようです。ただし、借入金額は購入物件価格の60%までになっているため、フラット35と併用して利用することで購入額の100%借入することも可能のようです。

一方で、西日本シティ銀行のように銀行独自で最大50年間の返済期間(完済時の年齢は81歳未満)を設けている商品を扱っている例もあります。
住宅取得資金だけではなく、カードローンやマイカーローンなど既存の借入金もまとめて組み入れることができる、返済を最大5年間据え置くことができるなど、商品性に特徴を持たせているようです。

住宅ローンという個人を対象とした商品性を考えた場合、高齢化も進み人口が減少する環境下、新規の住宅着工戸数が2022年度で86万戸まで減少、2040年には55万戸になるだろうという予測もあり、住宅ローン市場は縮小する一方で競争は激しくなる傾向が更に顕著になると思われます。
この様な中、借主の負担を軽減する=返済額を抑えるには、金利と借入期間の組み合わせで決定することを考えれば、超長期の融資期間を設けるのは当然の結果と思われます。しかし一方で、50年間、借主が契約通り債務を弁済し続けることを確約できるかという点では、100%確約されることは難しく、返済を滞るリスクは高くならざるを得ないでしょう。
しかし、ローン利用者の状態を長期的にモニタリングする管理体制を整備することで、返済が厳しくなる兆候を未然に捉え早目の対策を講ずることで、想定されるリスクを軽減することは可能になるのではないでしょうか。

これまでも言われていますが、住宅ローンを獲得するまで手間暇かけるが、契約後、正常に返済を続けるローン利用者の管理は殆ど行わず、知らないうちに他行に肩代わりされるという事例が頻繁に起こっていることを考えれば、個人向けの安全な運用資産として残高を維持するためには、新規獲得に力を入れるよりも、既存の住宅ローン利用者の管理体制を徹底することで他行流出を予防る対策を講ずることが最も重要になるのではないでしょうか。

2023年7月19日 (水)

PBR1倍割れ金融機関は改善策をどのように考えるべきか…

PBRが1倍を割っている地方銀行が、問題を改善すべく対策を講じているという記事です。

地方銀行、PBR1倍割れ改善に動く 横浜銀行はM&A融資増 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

記事にもあるとおり、PBRはROE(自己資本利益率)にPER(株価収益率)を乗じて算出されますが、式を分解すると次の通りになります。
・ROE(%)=当期純利益(PL)÷株主資本(BS)×100
・PER(倍)=株価÷EPS(=当期純利益÷発行済株式総数)
・PBR(倍)=株価÷一株当り純資産(BS)

発行済み株式数を減らすべく自社株買いを実施するケースもあるようですが、収益性を如何にして高めるかが重要なポイントであり、収益性の高いファイナンスへの取組みや新たなフィービジネスへの取組み等中期経営計画に盛り込むケースが多くなっているようです。
そもそも、PBRが1倍を下回っているということは、株価がその企業の純資産よりも安く、いま企業を解散した方が価値がある、つまり市場価値が解散価値を下回っているということで、市場から評価されていないことを意味しており、東証ではこの点を問題視しているようです。

本年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」ということで、上場企業に対して要請していますが、上場銀行の多くは自社判断で東京証券取引所のプライム市場での上場を選んでおり、その要請に対する対応とも言えます。
東証が示した内容は「cg27su00000048bt.pdf (jpx.co.jp)」となっています。

現状分析した上で改善すべき項目を具体化、改善すべき施策を計画として取りまとめ、その内容を開示することを求めているようですが、以下のポイント等も留意点として示しています。
・目標とする指標は、自社の状況を踏まえ、目標の設定に当たっては、具体的な到達水準・到達時期を示す方法のほか、目指すレンジを示す方法や、ROEやEPS(1株当たり利益)の成長率など変化率のトレンドを示す
・PBR1倍割れは、資本コストを上回る資本収益性を達成できていない、あるいは、成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆される1つの目安と考えられる

重要なのは、一過性の対策ではなく、持続的な成長に向けた収益強化策が期待されているということですので、金融機関も経営内容を根本から見直す必要があるということでしょう。
記事に書かれている対策は、上場企業としての株主対策という観点から、どれもが指摘されている数字を改善するための一つ手法のように見えますが、やはり、持続的な成長による収益強化をどのように実現するのか、そのためには、金融機関としての存在
意義は何か?各金融機関がおかれている環境から、見直すことが必要ではないかと感じます。
特に、株主ではなく、事業収益の糧となっている利用者=顧客の立場を最優先し、顧客価値の極大化を実現する事業モデルを構築することに重点を置くべきとも思います。新たなIT技術を利活用しながら、経営側にとっても具体的メリットのある施策を打ち出してもらいたいものです。

2023年5月 5日 (金)

アップルの預金サービスに関する記事です…

4月17日から始まったアップルの新しい預金サービス、最初の4日間で9億9000万ドル(約1360億円)もの預け入れがあったとのことです。

アップルの新預金サービス、開始4日間で約1360億円の入金(Forbes JAPAN) - Yahoo!ニュース

Appleの預金口座開設は30秒 既存銀行は生き残れるか - 日本経済新聞 (nikkei.com)

アップル預金口座の魅力は、一般の銀行の平均預金金利と比べ10倍以上の4.15%という金利にありますが、米金融大手ゴールドマン・サックスのバンクUSAとの提携により提供されているそうです。
ただし、
誰もが利用できるわけではなく、米国在住者でApple Cardを契約しているユーザーが対象であり、iPhoneのウォレットアプリから口座開設画面に進み、アメリカの社会保障番号(SSN)の入力と質問への回答だけで口座が使えるようになるようです。
これまでのサービスでは、アカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料ででき、後払いサービスも利用できるのですが、今回の預金サービス提供により、「製品・サービス販売」「決済」「貯蓄」「ファイナンス」の全ての機能がアップル経済圏で利用できる環境が整ったということでしょうか。

Apple Cardは、2019年にスタートしたアップルとゴールドマン・サックスが提供するクレジットカードで、こちらもiPhoneのウォレットアプリからすぐにカードを作ることができ、Apple Pay(NFCを用いた非接触決済)であればすぐに使えるものですが、与信枠の上限は低く抑えられており、低所得者や学生でも利用できるようにカード利用者のすそ野を広げているのが特徴のようです。
カードを利用すると、2~3%相当のキャッシュバックが「Apple cash」の預金口座に貯まる仕組みとなっているのですが、今回提供される預金口座と関連付けられることで、キャッシュバック資金が高金利の預金に預け入れられ、お得感が更に高まるものと思われます。

クレジットカードの利用に関しては、利用履歴等の情報を活用して「与信判断モデル」を体系化するメリットがあると言われていますが、利用者層のすそ野を拡大することで、独自のモデル構築の環境整備にも繋がっているのではないでしょうか。

また、この預金口座の上限は米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保護上限と同じ25万ドル(約3400万円)に設定されており、保護の対象にもなっているようですから、利用者側としては安心感もあるのでしょう。米国では、大手地銀の破綻が顕在化していることを考えると、安全で高利回り、各種サービスが付加されている点を考えると、預入額は更に増加しているものと思われます。

今回のサービスは、米国在住者向けのサービスでもあり、Iphoneユーザーの相対的利用者数が多い日本国内では利用できるものではないのですが、低金利環境下の日本において、この様なサービスが提供されるとなれば反響は想像以上かも分かりません。
企業経営という観点からすると、適用する金利負担を維持することができるのか否かがポイントになるのでしょうが、クレジット機能による手数料収益や後払いによるファイナンス収益も含め、総合的に収益事業化できるめどが立っているということなのでしょうか。
国内でも、携帯キャリアであるドコモ(=じぶん銀行)やソフトバンク(=PayPayi銀行)も独自のクレジットカードと銀行預金とを連携させたサービスを提供していますが、普通預金金利は0.001%という状況であり、太刀打ちできる状況ではないのが現状なのでしょうか。

2023年3月30日 (木)

「デジタル円」に関する記事ですが…

日本銀行の黒井田総裁が、「中央銀行デジタル通貨」に関して、個人的な見解ですが「今後実現していかなければならない」と強調したそうです。

日銀の黒田東彦総裁、デジタル円「実現していく」 重要性強調 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日本銀行としては、現時点で「中央銀行券であるデジタル通貨」の発行はしないと表明していますが、2020年10月に公表した「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」に沿って、2021年4月から「中央銀行デジタル通貨=CBDC」の実証実験を進めています。本年4月からは「パイロット実験」を実施するそうで、2023年2月17日「CBDCフォーラム」への参加希望者を対象とした説明会を開催すると発表していますが、消費者や利用できる店舗が直接関与して実際の取引を行うのではなく、中核を担うシステムと既存の仲介システムとの連携や各種デバイスとの連携等を想定した実験をすると言われています。

社会・経済のデジタル化はグローバルで進展することは避けることができない状況にあり、SDG‘sという観点から「金融包摂」を実現する手段としても積極的に取り組まれており、日本だけではなく、各国の中央銀行も、積極的に検討を進めています。
中国で実証実験が行われている「デジタル人民元」はスタートからの取引高が6000億元(約1兆円) を超えたと言われていますし、ユーロ圏の中央銀行であるECB(欧州中央銀行)も2020年に報告書を公開し検討を進めており、今後世界規模で利用が進む可能性は高いのではないでしょうか。

仮想通貨の一つとしてブロックチェーン(分散型台帳)上で設計される「ステーブルコイン(=担保などにより価格が大きく変動しない安定したコイン)」の法定通貨担保型に関してはCBDCに近い性質を持っていますが、Fasebookが発表したステーブルコインの一種である「Libra構想」は実現されることなく幕引きとなっていますし、米国で発生したコイン発行者である民間事業会社の運営管理体制の脆弱性により価値が暴落する等問題も顕在化し取締り強化が検討される中、国内では地方銀行が「ステーブルコイン」発行の実証実験を開始することが発表されています。

日本銀行としては、中央銀行券としての「デジタル通貨」を発行するものではなく、現在、民間事業会社が積極的に提供している「デジタル決済(電子マネーやQRコード決済等)」サービスを補完する観点から機能検証するという立ち位置を示しています。
全ての国民が「何時でも、どこでも、便利に、安全かつ安心して、適正な対価」で利用できるサービス環境として、デジタル決済の基盤が確立できれば良いのですが、消費者が利用できる機能(=ICカード媒体やスマートフォンアプリ)の提供と同時に利用できる場所=ネットワークの整備(現実と仮想環境)、更には、資金決済に関する仕組み(全銀ネット等の既存インフラを利用するのか、ブロックチェーン等の最新技術を利用し新たに開発するのか)をサービス提供事業体が単体で構築するとなると、必用となるインフラ整備への投資資金をどのように回収するのか考えなければなりません。「決済と送金」という事業のみではROI=投資対効果の極大化は難しいのが現実であり、民間主体での実現は厳しいのではないでしょうか。

そういう意味からも、国民生活向上の政策の一環として整備するのであれば、国と民間が相互に協力・費用負担し合いインフラを整備して運用する仕組みを確立することがベストと思います。現在、金融機関が提供する「預金」はある意味デジタル化された通貨であり、中央銀行である日本銀行も係わり安定した決済スキームが構築されている点を考えるならば、「ステーブルコイン」発行の実証実験のように金融機関が主体となり積極的に事業化を検討するよう声を上げてもらいたいものです。

2023年1月25日 (水)

事業成長性担保に関する記事です…

以前より話題となっていた「事業成長性担保」について、法制度面の改正も含め2023年中に実施される可能性があるとの記事です。
金融庁が25日の金融審議会(首相の諮問機関)に新制度案を示し、専用の信託免許を創設し認可を与えた金融機関を通じ解禁するということで、今国会に法案を提出するそうです。

事業成長を担保、新しい信託制度創設へ 金融庁検討: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「法人の総財産」である動産や債権、契約上の地位、知的財産権、のれん、更には、将来の事業価値=キャッシュフローまで包括的に担保として評価するものです。
動産や債権、契約上の地位、特許などの知的財産権に関しては、既に「質権」や「譲渡担保」により担保として活用できる道筋はできていますが、包括的な担保として捉えるならば、会社として事業を継続、維持・拡大できるのか「事業性」をどのように評価するのがポイントになりそうです。
融資実務における5大原則「安全性・収益性・流動性・成長性・公共性」の内、安全性の原則では「契約どおり債務履行できるのか判断すると同時に、万が一不履行の場合を想定し、担保や保証で保全措置を考える」ことが必要となります。これまでの融資慣行では「担保と保証の保全措置」に重点が置れていたのですが、今回の改正では、契約通り債務履行できるか=事業を継続・維持・発展させることは可能なのかという、事業性の評価ノウハウが重要な要素になるものと思われます。

このような観点から考えるとすれば、審査の入口段階で、担保の対価となる事業価値の評価の算定根拠を「利用者である事業会社」に正しく説明できるようにすることも必要になるのでしょうし、プロジェクトファイナンス等で利用される「コベナンツ条項」の取り扱いなども重要になりそうです。
制度としては、担保権者としての権利を守る対策等、課題と思われていた点については「信託契約」を利用することである程度確保できていること、利用者側の保護という観点からは、当該担保権の利用をできる金融機関は金融庁の認可を前提にするため乱用は防げるということを考えれば、それなりに評価できるのでしょうが、これまでの金融機関実務で「事業性の価値評価」を実施できるノウハウが組織として蓄積されているかという点を考えれば、どこまで普及するかは金融機関側の体制面の整備次第ということになるのではないでしょうか。
ここ数年「担保や保証に過度に依存しない、事業性評価に基づく融資」の励行を指導されてきましたが、なかなか、改善できていないという現況を考えれば、 法改正されたとしても、記事にある「不動産に依存した融資慣行が転機を迎える可能性がある」という点はどうなのでしょうかね…

2023年1月14日 (土)

デジタル金融による事業収益化は可能なのか…

ゴールドマンサックスが部門別損益を初めて公表しましたが、デジタル金融部門では大幅な損失を計上しているとの記事です。

ゴールドマン、デジタル金融の損失開示 3年で30億ドル: 日本経済新聞 (nikkei.com)

先ごろ、全従業員のおよそ6%にあたる3200人の人員削減を行う事が判明していますが、3大事業部門の中でデジタル金融部門が足を引っ張っているイメージのようです。

日本では、従来の金融モデルでは成長が難しいのではないかとのことから、、Web3.0等における最先端のイノベーションの実現を目指すべく、金融庁も含め、政府が主体となり「デジタルと分散型金融への取り組み」を強化していますが、当該分野で先行するアメリカにおいて、デジタル金融部門での本格的な収益モデルは未だ確立されていないということでしょうか。

Web3.0そのものの定義が明確になっていない状況下、デジタル金融分野では「決済と送金」業務がメインとなっており、ここから高収益モデルを確立することは難しいのは当然のことと思われます。低コストでIT化=事業化を実現できたとしても、運用管理面=特にマネロン対策などを強化するコスト等を考えれば、総合的な収益性は低くならざるを得ないということでしょうか。
また、ファイナンス分野においても、初期段階では儲けが出ていても、今後、与信管理という面を考えればコスト増が予想されます。
これまで実現している事業モデルは、どちらかというと、利用者に対する利便性向上をうたったものが前提になっているように感じられますが、採算割れせず一定の利益を計上できるだけのビジネスプランとして確立するには、まだまだ時間がかかるようにも思います。

バックキャスティング思考からすると、どのような未来像を描けるかが重要であり、それを実現するために今後の検討ステップを未来から現在に遡って明確にすることがポイントのはずですが、「未来像」が明確でない状況で、既存の業務を簡素するために新たな技術を活用するだけでは、新たな果実を生み出すことは難しいのでしょう。

アメリカでは昨年暮れ以降、景気減速への懸念が強まってきたことから、大手金融機関は相次いで与信関係費用の増加により減益予想の決算を発表していますが、アメリカの景気が減速してくると、円高の動きが強まりやすくなり、我が国も輸出関連産業を主体に景気後退に陥る可能性も出てくることが予想されます。

コロナ後、政府は経済活動重視の政策に転換していますが、世界経済(中国を含む)の減退、一方で国内金利の上昇というマイナス要素を勘案すると、国内金融機関の各種引当コストは今後増加する可能性も高く、収益性は更に悪化する懸念があります。
「未来像」を描けていない現状で、デジタル金融に代表される新規事業により減益要因を補填するまでには、至らない状況が続くのではないでしょうかね…

2022年12月14日 (水)

JR東日本が銀行業務に参入するようですが…

JR東日本が、デジタル金融サービス「JRE BANK」を2024年春に開始すると発表しました。

JR東、ネット銀行に参入 2024年春にスタート ATMの現金引き出し手数料無料 - ITmedia NEWS

楽天銀行と提携し、銀行代理業ライセンスを取得して実現するようですが、住信SBIが提供している「NEOBANK」のサービス内容と同じスキームかと思います。
6月のブログでもコメントしましたが(http://www.hfmc-honda.com/index-BLOG_20210622.html)必然の流れなのでしょうが、検討すべきポイントは多々あるような気がします。

JRBANKの目指すコンセプトでは、既存のサービスを統合して「新たなデジタル金融」を目指すとのことですが、ここに、銀行業務をどのように組み込み付加価値を生み出すかがポイントになるかと思います。駅のATMによる現金引き出し手数料が無料になるというだけでは、顧客を獲得するにはインパクトは低いような気もしますし、おそらく、東急電鉄のように発券機をCDとして利用できるようにする機能も採り入れるのではないかと思いますが、今後、現金引き出しニーズはどこまであるのかを考えると、インパクトは低いでしょう。
ポイントサービスとの連携に関しても、先行するNEOBANKのJALマイレージ、Tポイント、山田ポイント等急拡大している様子がない点を考えると、どこまで訴求力があるのかも疑問です。
送金手数料を優遇するという点に関しても、フィンテック系企業の台頭により競争環境が激しく、その点でもメリット感は無くなるのではないでしょうかね。

やはり、鉄道+ステーションとしてのリアル環境をどこまで活用することができるのか、貯蓄とファイナンスをどのようにして組み込むことができるのか、付加サービスをどこまで拡充できるかがポイントになるような気もします。
政府が力を入れている「貯蓄から投資への転換」を後押しする対策として、少額投資非課税制度(NISA)について、投資枠の上限を拡大し、年間で計360万円、生涯分で1800万円とする案を軸に政府内で検討を進めているようですが、NISAに関連する商品を利用する際に何か付加価値を提供できるようにするとか、ファイナンスを利用する際に適用金利以外の付加価値を提供する等、企画力が試されるのではないでしょうか。

一方で、口座開設の際や口座利用の動態把握等「アンチマネロン」対策など管理面での負担が大きくなることや、個人情報保護対策の強化も視野に入れる必要があり、銀行代理業のライセンス取得という形態であっても体制整備面でも検討すべき点が多く、収益性はどうなるのかも検証する必要はありそうです。

«スマホ送金「COTRA」開始の記事です…